第5話 ティトラウステス

「ファオラン嬢、この家を出て行かれると言うのは真実ですかっ?」


わたしとリリーちゃんがステュティラちゃんの家に入って行ったにゃらば。

ファオランさんと彼女に訊ねてる男の人がいた。


「ええまぁ、ティトラウステスさん。

 すぐにと言う訳では無くテ、年明けに護衛団に女子寮が出来るそうなんデス。

 それからネ」


ファオランさんは知り合ったチャイニャの商人の娘さん。

男の人の方は見たコトある気もするんだけど、誰だったかしら。


「そんな?!

 一生この道場にいてくれるかと思っていたのに!」


男の人はファオランに詰め寄ってるカンジ。

手を握る様にして、かなり距離が近い。

普通の知り合いの距離間じゃにゃいわよ。

それじゃ、恋人同士みたい。

ファオランさんの彼氏?!

いつの間にそんな人出来たの?

と思ったけど、ファオランさんキレイだし愛想も良い女性。

ボーイフレンドの一人くらい居てもおかしくにゃいわね。


「あ、この男~!

 みゃたニャれニャれしくして!」


フーッとリリーちゃんが男に近付いて威嚇。

驚いてる隙にサッとファオランさんは男からはにゃれるの。


「リリー、帰ったネ。

 アレ、その猫……男爵!

 久しぶりネ」

「リリーちゃんですね。

 その黒猫もファオラン嬢の猫ですか?」


男の人は訊きながら、ファオランさんの肩に手を回す。

するっとファオランさんが身を躱す。


んんーーーん。

ファオランさんの恋人と言うよりも。

男の人が一方的に近寄って、ファオランさんは逃げてるフンイキだわ。


「コラ、距離が近すぎ!」


ガン!

と男の人の頭をブンにゃぐったのはステュティラちゃん。


「テトラ、アタシに恥をかかせんなぁ!

 ファオラン、今のうちに行ってちょうだい」


「ナニをする、妹?

 私はただ、ファオランさんと話をしていただけで……」

「話をするだけで、手を握ったり、肩を抱いたりすんな~。

 オマエ、チカン扱いされても文句は言えないからな」


「実の兄を掴まえて、チカン呼ばわりとは!

 失礼だろう、ステラ」

「失礼なのはオマエだ~!」


「私は軽い気持ちでは無くて……

 彼女こそ我が生涯の伴侶と思ってだな」

「勝手にそんなコト思い込むのが、キモチ悪いんだわよ~」


ああ、どこかで見た顔だと思った。

あの男の人、ステュティラちゃんのお兄さんだわ。

にしても印象が少し違うわ。

以前、エステルちゃんが挨拶してて、見た覚えが有るけれど。

もっとマジメそうにゃフンイキの男の人だったわ。

こんにゃニャンパにゃ人だったかしら。

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