第13話 決めた事

みゃみゃみゃ。

わたしの胸にいるみゃーが言う。


わたしは一瞬前まで、なんだか叫び出しそうな気持だったのだけど。

それだけで落ち着いてしまった。


「あらっ猫」


ファッティマさんがのぞき込む。


「いいなー、猫飼いたかったんだけど。

 許してくれなかったのよね。

 あなたの猫なの?」

「はい。

 ウチの家族のみゃーです」


「ここは護衛団の建物の4階だってのに。

 よく入ってこれたな」


感心してるのはトーヤー隊長。

わたしはなんとなく、ドヤッ、て顔でみゃーを見せびらかす。


「いいなー、いいなー。

 わたしにくれないかしら」


ファッティマさんはとんでもない事を言う。


「ダーメーです。

 家族だって言ってるでしょう」


「ちぇー」


スネた顔をしてるファッティマさんは少しカワイイ。

先輩に可愛い、と言うのも失礼なのだけど。

カワイイと思ってしまった。


「それより、ファッティマさん。

 この本片付けましょう。

 廊下に置いておいたら、ホントに蹴飛ばされます」


「大丈夫よ。

 その辺にテキトーに散らかしてるのは写本や写本の写本。

 貴重な本なんて一冊も混ざってないわ」


そうなんだ。

その区別は着けてるんだ。


ファッティマさんはそう言いながらも本を拾い出す。

わたしも手伝って、隊室の中へ。

机の上に本を置いて。

その前に椅子を二つ並べたファッティマさん。

並べた椅子を使ってまた寝っ転がる。


「ファッティマさん~。

 ダラシないですよ~」

「ここはもう廊下じゃないし、いいでしょ」


「……せっかくの美人さんなのにもったいないな」


ピクピクっとファッティマさんの耳が動いた。

わたしは柔らかい口調を浮意識しながら、話かける。


「ファッティマ先輩、先ほどは先輩相手に失礼な事を言ってすいませんでした」

「ん-。

 気にしないで」


そっぽを向いてるファッティマさん。

もうこのまま行ってしまおうかしら、とも思うけど。

言うって決めたんだった。


わたしは椅子に寝そべった先輩女性に近づいていく。


「ファッティマさん、お話があります」

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