第11話 床とワンピースとアレシュ先輩

わたしは護衛団の本部の建物に来ていた。

アザム団長の部屋や、ナシール副団長の部屋もあるし、ファオランさんが仕事してる装備課もここにある。

ステュティラちゃんとわたしが勉強する時もここの三階を使う。


わたしが所属している4番隊の隊室もここにあって、わたしはそこに行こうとしていた。

すると知っている男の人がいた。

アレシュさん、この護衛団の先輩さんだ。

彼はステュティラちゃんの武術道場の弟子で、そこでも何度もお逢いした事が有る。

まだ新入りのわたしとしては、数少ない親しい団員の人。

良い人だとは思うんだけど、何となく頼りにならない雰囲気なのよね。


アレシュさんはなんだか廊下をウロウロしていて、その目が一方向を向いている。

挨拶しようと思ったけど。

アレシュさんは不審な表情。

食い入るように真剣なまなざしになったかと思うと、だらしなく相好を崩している。

何してるの?


わたしが廊下の先に目を向けるとそこにはファッティマさんがいた。

廊下だと言うのに寝そべって本を読んでいる。

この人は……ワンピースを着ていると言うのになんで廊下に寝転がろうと思えるのかしら。

やっぱりこんな人とわたし似て無いわ。


ファッティマさんはワンピースで寝そべってるものだから、裾が捲れて足が見えている。

角度によってはその中身まで見えてしまうかもしれない。

……さては。

そのスカートの中が正に見える角度、その位置でウロウロしているのがアレシュさんだった。


「アレシュ先輩、ナ・ニ・をしているんですか?」


そのわたしの声は冷え切っていたと思う。

アレシュさんは1メートルくらい飛び跳ねた。


「エステル?!

 エステルたん、いやエステルさん。

 いや、えーとエステルくん。

 何でもないよ。

 後輩のエステルに挨拶しようかな、なんて寄っただけなんだよ。

 あは、あははははは。

 じゃーね」


サササっと遠ざかっていく。

…………いくらなんでも慌て過ぎじゃない。

わたしは一瞬ホンキで頭に血が上ったのだけど。

アレシュさんのあまりにもカッコ悪い姿を見て、怒る気にもならなくなってしまった。

ステテュラちゃんならパンチくらい喰らわせるんだろうな。

母さんだったら、オトコノコってバカよね、と笑って言いそう。


さてと、問題はファッティマさんだ。


「ファッティマさん、いくらなんでもダラしないです。

 床に寝ないでください」


わたしはファッティマさんに言っていた。

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