第6話 ダダッコ

わたし余計な事しちゃったかしら。

図書館に居座ってるファッティマさんはもう全く動きそうに無い。


「わたし一生本に囲まれて暮らすわ。

 本はダメダメな私に、ホントーにキミはダメダメだ、なんて言わないもの~」


ネガティブと言うよりダダッコみたいになっちゃってる。


「うーーんん。

 仕方ないな。

 エステルくん、護衛団に戻って一度出直そう」


トーヤーさんがわたしに言う。

司書さんはええっ?!、って顔になっちゃってる。


「トーヤー隊長、良いんですか?」

「しょうがないだろう。

 ファッティマのヤツ、まったく動きそうに無いし。

 護衛団に帰ってナシール副団長に相談してみよう」


その瞬間だった。

長い黒髪の女性がササっと立ち上がって、トーヤーさんの後ろに居た。


「トーヤー……冗談はヤメテ。

 これ位の話、副団長にワザワザ伝えるような話しじゃ無いわ。

 そうでしょ。

 アナタもそう思うわよね?」


ファッティマさんは何故かわたしにまで同意を求める。

いえ、そう言われましても……


「ファッティマ、それはムリだ。

 この図書館から請求書が来る。

 護衛団の支出は少額であってもナシール副団長は絶対目を通すんだ。

 先に伝えないと、自分が怒られる」

「いやー。

 絶対いやー。

 こわいこわいこわい~」


ナシール副団長。

『鬼のナシール』なんて呼ばれる護衛団の副団長さんだ。

確かに眼つきは怖いけど……そんなにイヤな人では無いとわたしは思ってる。

実際にナシールさんが目の前に現れると緊張しちゃうけど。

だって、いつも怒ってる雰囲気なんですもの。


「ナシールの鬼~。

 あの人、ホントにぶつのよ。

 相手が私みたいな美人女性でも容赦が無いの~。

 ゲンコなのよ。グーパンなのよ。

 そんな話聞いたら、絶対ぶたれる~」


トーヤー隊長の袖につかまって、イヤイヤと首を振るファッティマさん。

髪に隠れて良く分からないけど、涙目になってるみたい。


「分かりました。

 ファッティマさん、副団長に報告されたくないんなら行きましょう。

 ついでに女子寮の寮長も引き受けてくださいね」


「エステルくん?

 ファッティマに寮長はやって欲しいが……

 副団長に報告はしなくてはならないぞ」

「トーヤー隊長、こう報告しましょう。

 図書館を占拠する怪しい人物がいて、私たちが捕まえて引きずり出しました。

 その時少し本を傷めてしまった、と。

 ウソじゃないと思います」

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