第4話 図書館に泊まる

わたしはホルムスの図書館にいる。

トーヤー隊長とファッティマさんと言う人に逢いに来たのだけど。


「もう~出て行ってくださいよ~。

 いつまで居座る気なんですか」

「いや。

 入場料は払ったんですもの。

 このまま一生ここに居る事にするわ」


一生!?

図書館司書の方と本の山に囲まれて寝ている人は言い争っている。

この寝そべって本を読んでる人がファッティマさん……なのよね?

癖のある黒髪を無造作に伸ばしていて、顔は髪の毛に隠れて良く分からない。

ドレスの様な服を着ていると言うのに、床に寝そべってしまってる。

テコでも動かない、と態度で示してる。


司書の人が困ったようにこちらを見るけど。

……わたし?

わたしを見られても……

トーヤーさんが言ってくれる。


「ファッティマ、この人困ってるじゃないか。

 もう出よう」

「……トーヤー隊長。

 いや、だってこの人最初に泊まって良いって言ったもの」


「もうしばらく、護衛団に顔出しして無いじゃないか。

 心配したんだぞ。

 こんな所に寝泊まりしてたのか」

「心配……そうよね。

 私なんてゼンゼンシッカリして無い人間だものね。

 心配よね。

 なのに、一週間も放置してたって事は……

 私の事なんて本当はどうでも良いんだわ~。

 存在そのものを忘れてたんだわ。

 私の顔を見なくて済むから心の中では喜んでいたんだわ」


ファッティマさんは一瞬、トーヤー隊長の顔を見たけど。

その後はそっぽを向いてしまった。

なんだか落ち込んでるみたいだけど大丈夫なのっ?


「うーん。

 彼女は……理由も無くネガティブな発言が多くてな。

 それでパルミュスはイヤがってるんだ」


ああ……そーゆー……


「ホントに泊まって良い、って言ったんですか?」


わたしは司書さんに訊ねてみる。

密かに……わたしも図書館に泊まって良いなら泊ってみたいな、と考えたのはナイショ。


「言ってません!

 言ってません!

 この人が……私護衛団の団員、任務でどうしても夜までここに建物にいなくてはならない、と言うから。

 護衛団の団員なのは事実みたいでしたし……

 だから仕方ないのかな、って。

 そうしたらその日からずっと、泊まり込んで。

 いつの間にか本は勝手に取り出して、読み散らかすし。

 大迷惑なんです。

 早く連れ帰って下さいっ!」

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