第3話 本のムシ

ホルムスの街には図書館がある。

そこには貴重な本が蔵書として多数収められているわ。

入場は少しだけお金を取られる。

回覧板とか、安い絵草子ならば読み放題。


でも貴重な図鑑や重要な資料になってくるとそうはいかない。

借りようと思ったら……未成年のわたしに許可は下りない。

お母さんに頼んで借りて貰う事は出来るけどけっこうお高い。

入場料くらいならわたしのお小遣いでもなんとかなる。

けど、この金額は見習いとして護衛団から多少の給金を貰っていても辛い額。

護衛団の給金は年齢とともに上がる筈。

もう少し大人になったらチャレンジだわ。


現在わたしとトーヤーさんが図書館に来ている。

ステュティラちゃんとパルミュスさんは護衛団に残ってる。


「図書館……アタシ本見てるとそれだけでアタマ痛くなってくるの」

「アタイ、ファッティマ苦手なんだってば」


そんなワケでわたし達だけ、ファッティマさんに逢いに来たの。

みゃーもウロウロしてたんだけど、図書館の中に猫は入れない。

いつの間にかいなくなった。

お家に帰ったのかしら。


「あの……アナタたち護衛団の方なんですよね」

「はい。

 そうです……けど?」


図書館の司書の方がなんだか必死な顔でわたしに話しかける。


「なら、あの人なんとかしてくださいっ!

 もう一週間!

 一週間も泊まり込んでるんですよ!」


「泊まり込んでるって……

 誰がですか?」

「ああー、ファッティマだね。

 分かった。

 自分がなんとかするから落ち着いて」

 

トーヤーさんはなんだか分かった様子だけど、わたしは全然理解出来ていない。


司書さんが涙目でわたし達を案内する。

と、キレイに収納された本棚が整然と並ぶ中におかしな“山”があった。

そこだけ、雑多に本が積まれてる。

整理してる途中では無いのはわたしだって分かる。

読み散らかされたような本の山。

開いたページもあれば、逆向きに無造作に置かれた本もある。


「ああ、ああああぁぁぁぁああああ!!!

 貴重な本が~~

 大事に扱って下さい、って言ってるじゃ無いですか」


「大事に扱ってる。

 誰よりもこの子達を大事にしてるのは私よ。

 この子達は私の友達なんだから」


本の山の中に誰か寝ていて。

そこから声がした。

彼女がファッティマさん。

護衛団で有名な『本の蟲』だった。

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