第99話 船を軽く

「エステル、あれよ。

 風の神の力、ルドラ様にお願いしたら」


「そうしようかと思ったんだけど……

 強い風の力が一気に出ちゃうと、それこそ危険なの!

 急進したら、ホントに船同士の事故起こしちゃう」


確かに昨日、船を出す時ルドラ神の力を借りた。

ガッタンと船は大きく揺れたのよ。

アレをやったらすぐに別の船にぶつけちゃいそう。


「水の流れが強くて、上手く操船出来ないんだよね。

 なら少し浮かせて水の影響を減らしたらどうかな」


提案してるのはエラティー隊長ね。

いつの間にか客室キャビンを出て、船の中央へ。


船を浮かせるって、だから風の神ルドラ様の力を借りたら。

船同士事故を起こしそうって言ってるじゃにゃいの。


大河ザーヤンテにはわたしたちの小型船ジャーエヒだけじゃにゃい。

他の船も運行してるの。

ぶつかっちゃったら、タダじゃすまにゃいわ。

船は大破。

乗ってる人たちは全員河ににゃげ出される。

そんにゃコトににゃっちゃったら、エステルちゃん、自責の念で落ち込んじゃうに決まってるわよ。



「アシャ・ワヒーシュタ。

 天測を司る正義の方。

 穢れを焼き尽くす聖なる火よ。

 僕に力を貸して」


浅黒い肌の美少年が唱えていて、彼は膝をつく。

船に両手で触れて、目を閉じるの。


少しわたしの猫足の下に浮遊感があって。


「あっ?!

 ……船の動きが軽くなった気がする?」


エステルちゃんがそう言って。

水の動きを受けて不規則な動きをしていた小型船の動きが。

軽やかに、安定した動きになる。

スムーズににゃにゃめ前方へと進みだすの。


これは。

エラティー隊長のアシャー神の加護の力。

水の流れの影響を受けて、エステルちゃんが操り切れずにいた船。

おそらく船を軽くして水との接触面を減らしたのね。


砂海の小型船ニャビールジャーエヒは大河ザーヤンテを静かに遡っていく。


「あの……エラティーさん。

 大分慣れて来ました。

 もう大丈夫です」

「ああ、僕もちょうど疲れて来たんだ。

 じゃあ、戻しちゃうよ」


「はいっ」


そんにゃ会話があって、エラティー隊長は客室キャビンへ行って眠り始めてしまった。

この人加護の力を使い過ぎて疲れると、すぐ寝ちゃうのよね。

軽ーく言ってたけど、実は結構ムリして力を使っていたんじゃにゃいかしら。


ちなみに客室キャビンでは二日酔いのライールさんもダウンしてるわ。


「なんだ、エラティーくんまで。

 あれしきのビーラで二日酔いとはダラシ無いぞ」


いや、ライールさん、あにゃたと一緒にしにゃいであげて。

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