第97話 キ〇ッツ?!

「アンタ……!

 いつの間にか居なくなった、と思っていたら。

 また!

 いつの間にか勝手に乗り込んでる。

 アタシの船に勝手に乗るなんて、図々しいわよ」


ステュティラちゃんが指差してるのはスポーツマン風の青年ね。

護衛団三番隊隊長イルファンさん。


砂海の小型船はもうエスファハーンの街をはにゃれて、ザーヤンテ河を移動してるの。

気が付いたら、何故か客室キャビンにイルファンさんが座っていたのよ。


「……ステュティラちゃん……

 この船はお父さんので、ステュティラちゃんのじゃ無いよ」

「ああ、ゴメンね。

 ホラ、イルファンさんは忍ぶのが仕事だから。

 あまり気にしないであげて」


ステュティラちゃんにツッコンでるのはエステルちゃん。

フォローしてるのはエラティー隊長ね。


そんにゃ会話をまったく気にせず、イルファンさんは河のにゃがれを見ているの。

にゃんだか、元気がにゃさげ。

ため息をついてるわ。


「オジサン、元気無いじゃない。

 あれ、いつもの真っ黒けの服はどうしたのよ」

「うむ、イロイロあってな。

 黒装束は止めることにしたのだ」


「そうなの?

 アレ着ていないと落ち着かないとか言ってたジャン」

「イルファンさんが黒を止めるなんて……

 何かあったの?」


「……実は拙者は……幼い頃ずううううっと憧れていたのだ。

 男の子なら誰でも憧れるだろう。

 闇に潜む一族。

 影に忍んで誰にも姿を現さず、忍び寄る恐るべき手練れ」


イルファンさんが遠くをにゃがめにゃがら語ってるの。

誰でも憧れるのかしら。

闇に隠れるとか、暗いじゃにゃいの。

お日様の下で堂々としてた方が良いわ。

忍者とかスパイみたいと思えば、多少のカッコ良さは有るかも。

でも一つ間違えば、チカンとか変質者よ。


「……それって暗殺族セムのコト?

 イルファンさん昔話してた気がするね。

 暗殺族セムに憧れた、って」

「………………

 そうなのだ。

 それが……それが……

 実態はあんな、カッコ悪い連中だったとは……

 憧れてずっと黒一色の服を着ていた自分がバカみたいではないか!」


ええっ?

イルファンさん、少年時代のアコガレでずっと黒一色のお洋服だったの?

確かに暗殺族セムの人たちは……護衛の人を嘲笑ったりあまり良い雰囲気の人じゃにゃかったけど。

それでショックを受けるのはイルファンさんの勝手で、別に彼らが悪いワケでもにゃいと思うわよ。


「ハァ……

 よく分かんないけど。

 黒い服止めるんならそれはそれで良いんじゃない。

 フツーの服の方がサワヤカで似合うわよ」


ステュティラちゃんは反応に困りにゃがらも答えてる。


「そうか。

 フーム。

 今後は黒は止めて、猫の扮装をしようかとも思うのだが……

 どうだろう?」


「……ネコ?」


「ウム。

 猫耳と猫尻尾を着けてだな……ヒゲもいるかな。

 毛皮に身を包んで……猫のようにするのだ」


……イルファンさん?

ナニ考えてるの!


少女たちの声が響くわ。


「止めろっ!」

「止めた方が良いですっ!」

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