第95話 見てくれる人

「うーーんんん」


にゃんて言いにゃがらアズダハーグ少年はわたしの顔を覗き込むの。

ぷいっと顔を逸らしちゃうわたしにゃのよ。


「……猫に助けられた?……」


少年がわたしに顔を寄せると、トーゼンエステルちゃんとも近付いて。

エステルちゃん、少し居心地悪そうね。

アズダハーグくん、そろそろ諦めてくれにゃいかしら。



「その猫に逢ってどうするつもりなんですか?」


エステルちゃんは訊ねるの。


コイツ大丈夫?

にゃんてバカにした雰囲気のステュティラちゃんとは違って、マジメにゃ顔よ。


「あ……その……」


皇子は少し赤らめていた顔を更に赤くしてはにゃし始める。


「どう、って決まってる訳でも無いんだ。

 だけど、どうしても逢いたくなって……

 その僕は昨夜信じられないような体験をして……

 その……ところどころ夢みたいな話で……」


少年は少し迷うようにゃ表情。

はにゃし続けて良いのか、問うようにゃ顔を浮かべてる。

エステルちゃんはうにゃずくわ。

少年にはにゃしてください、と言うように。


「……そんな訳で僕たち死にかけて、殺されかけて。

 その襲われたトコロを猫に助けられて……」



「……要するに襲撃されて、ケガしてぼうっとしてたんで。

 それで猫に助けられたなんて夢を見た、て言う話よね」


無粋にツッコミを入れるのはステュティラちゃん。


「いや、そうでは無くて、本当に……

 とは言うモノの私も、もしかして夢だったのではと思いもするのだが」

「夢だよ、夢。

 決まってんだろ。

 パピルザク相手に猫が無双してたなんて夢に決まってらぁな」


護衛の人たち自信にゃさげね。

このままとぼけちゃえば、大丈夫そうだわ。


「……その猫にみゃーが似てるんですか?」

「うん。

 キレイで不思議な気品があってそっくりなんだ」


エステルちゃんは馬鹿にしたりせず、アズダハーグ少年のはにゃしを聞いてるの。


「その猫に逢ってお礼を言いたいんですか」 

「うん。

 それもあるけど……

 僕スゴク不安で……そのこんなコト言っても信じてもらえないと思うけど。

 昨日僕、自分の身体が別人に乗っ取られたみたいになって……

 勿論タダの妄想だと分かってるんだけど、不安で不安で……」


「…………分かる気がします」

「えっ?!」


「不安になる事ってあります。

 とても自分に自信が無くて……自分は誰にも愛されて無いんじゃないか。

 世の中は自分を必要としてないんじゃないか、って……

 すごくよく分かる気がします。

 だけど大丈夫です。

 誰か……誰か一人二人、少なかったとしても必ず自分の事を見てくれてる人はいます。

 大事に思ってくれてる人がいます」

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