第84話 少年の服を脱がせる男

大河ザーヤンテ。

その水が凄まじい勢いでにゃがれて行くの。

わたしとイルファン隊長は丘のような高い地形に逃げてそれをにゃがめてる。


するとザワザワと音がして集まってくるの。

パピルザク。

人間大のサソリの魔物ダェーヴァ

ホントウにゴキブリみたい。

一匹見かけたら、100匹はいるのね。


「先ほど投げつけられたニオイか」


イルファンさんとアズダハーグ皇子の体からはイヤにゃニオイがしてるのよ。

わたしのおはにゃにツーンと来る刺激臭。

暗殺族セムがにゃにかにゃげて行ったのよ。

そのにゃかみが二人のお洋服にかかったの。

イヤなニオイがパピルザクを引き付けている。


いやーん。

もう疲れたって言ってるじゃにゃいの。

コイツラ、にゃんだってイヤなニオイに引き寄せられるの。

わたしにゃんかイルファンさんと距離を置きたいくらいにゃのよ。

バカにゃんじゃにゃい。

痛んだ食べ物だってコトくらい分かるでしょうに。

やっぱり人間とは味覚や好みが違うんだわ。


わたしは男の人二人背負ってるの。

もうこの魔物ダェーヴァとあんまり戦いたくにゃいわ。

さんざんやっつけたし、ホントウに今日は疲れたのよ。


イルファンさんは黒い服を脱ぎ去って、薄いシャツのみの格好ににゃる。


「皇子もその服を脱いでください。

 ニオイのついた服を遠くに捨てれば……」

「何をするんです?!

 男に服を脱がされるのはシュミじゃ有りません!」


皇子は脱がされるのに抵抗してる。

ちょっとフラチな絵面ね。

線の細い美少年から、体格の良い男の人が服を無理やりはぎ取ってるの。

見ちゃダメね。

わたしはそっぽを向くけど、時々チラっとそっちに目が向かっちゃうの。

皇子の素肌が見えて来る。

あまりお日様を浴びて無いんでしょう。

この国の人らしく浅黒いんだけど、あまり鍛えられていないほっそりした少年の肉体。

大事に育てられて来たんでしょう。

キレイにゃ肌。

薄く筋肉のスジが見えてるの。


「止めなさい!

 これ以上自分の服に手をかけたなら、本気で殺しますよ。

 コイツラをなんとかすればいいだけでしょう」


と、言ってアジ・ダハーカさんはイルファンさんの腕を逃れて立つの。


少年の目が闇夜にギラリと光る。

彼の口が言葉をつむぐ。


『壊れよ』


少年に近付いていたパピルザク。

黒い甲羅を纏った体がいきなり崩れていくの。


「たかだか地を這う地虫の分際で。

 この邪龍に近づくとどうなるのか、教えて差し上げましょう」


彼の目がギラギラと輝いて。

サソリの魔物ダェーヴァがボロボロと地面に還ってゆくわ。


凄まじい破壊力ね。

イルファンさんはメソポタミアの三分の一を滅ぼした大悪魔、と言っていた。

邪龍アジ・ダハーカ。

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