第85話 帰還

さぁもう帰りましょ。


パピルザクたちは皇子が滅びの呪文で数を減らしたわ。

抵抗してたけど、皇子は結局服をはぎ取られた。

イルファンさんが自分の服と一緒に遠くへ放りにゃげたの。

残ったパピルザクはそれを追って行ったわ。


わたしもうその辺で寝ちゃいたいわ。

ダメね。

朝起きてわたしがいにゃかったら、エステルちゃんが心配する。

担いだ男の人たちもいるし。

エスファハーンまでは帰らにゃきゃ。


わたしとイルファンさんはエスファハーンへと走り出す。

皇子はイルファンさんの腕のにゃか寝そうににゃってる。


「チッ。

 久々に『力』を使ったら疲れたぜ。

 俺は寝るからな」


ズルイわ。

わたしだって寝たいのに。


エスファハーンに辿り着いて、大きにゃ橋をエイッと飛び越え門のにゃかへ。

この辺で良いわね。

わたしは護衛と兵士を地面へ下ろす。

イルファンさんが声を上げる。


「こんな所で寝ている人間がいるぞ」


門兵が見に来るのよ。


「なんだ、酔っぱらいか。

 まだ子供じゃないか。

 起きやがれ」

「待て……

 その子供は……お子様は。

 アズダハーグ皇子じゃないのか」


「……!……」

「こっちに倒れてるのは……

 皇子直属の護衛の男だ!」


「なんてこった!」

「争ったような形跡があるぞ。

 おそらく襲撃されて、逃げて来たんだ」


「皇子は無事なのか?」

「すぐ人を呼べ。

 医者もだ」


「皇子、アズダハーグ皇子!」

「大丈夫だ。

 服は脱がされてるが、傷はどこにも無さそうだ」

 

「……おかしくないか?

 なんで皇子たち門の中に居るんだ?

 逃げてきて、門の外に辿り着くなら分かるけどよ」

「現在はそれどころじゃ無いだろ!」


そう言えばそうね。

失敗しちゃったかしら。

もう眠くてあまり考えてられにゃかったの。


そしてわたしはやっとエスファハーンの市場に帰り着く。

ここまで来れば、エステルちゃんのいるテントまでもうすぐね。


ちょっと河を散歩しようと思っただけにゃのに。

時間が掛かっちゃったわ。

エステルちゃんたちもう寝てるかしら。

あらっ、テントの側に誰かいるわ。

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