第83話 眠いの

わたし、ホントウに疲れて来ちゃった。

眠いんだったら。

だからこの後はさっさとエスファハーンに帰って休みましょ。


だって言うのに。

わたしたちが大河ザーヤンテをはにゃれようとすると、襲って来た。

誰がって、暗殺族セムの人。

エスファハーン側から来た二人以外にも、居たのね。

ペルーニャ皇帝が居るハズの方角から現れた黒いマントの男たち。


「アナタがた、先ほどはこの身体を殺すなどとほざいていましたねぇ。

 ウフフフフフフ、クケケケケケケハァ。

 許しません!」


アズダハーグ少年の目が、切り揃えた前髪の下ギラギラと輝く。

邪龍アジ・ダハーカさんと呼ぶべきにゃのかしら。

意識は邪龍のモノにゃのかもしれにゃいけど、その身体は子供だってのにどうしようって言うの。


「くくく……何を子供がほざく?」

「待て!

 我らの仲間はどうした?

 エスファハーン方面からおのれらを迎え撃つ手筈だった」


「クッフフフフフフフ、その男たちはすでにいませんよ。

 私がやったんじゃ無いのが残念ですがね。

 すぐにアナタも後を追う事になります」



『壊れよ』



その瞬間、暗殺族セムの体を覆っていたマントがボロボロと崩れ去る。


「……!……」

「……おのれ!」


「フゥン、外しましたか。

 久々過ぎて、まだ寝ぼけてますね。

 なんせこの身体の中で10年以上眠っていましたからねぇ」


いいから放っておいて行きましょうよ。

この人たちだって水に呑まれるかも。


黒いマントの男が皇子と彼を抱えるイルファンさんににゃにかにゃげつけるの。


「喰らえ」

「砂漠の果実を腐らせ我らしか知らない手法で混ぜ合わせた物だ。

 周囲の魔物ダェーヴァを滾らせる匂いを放つ」


「ペルーニャ皇帝の大軍でさえ分断したのだ」

「キサマラはもう死んだも同じ……くくくく」


だから!

わたしたち急いでるのよ。

にゃんでイチイチ邪魔するのよ。

あんまり直接、人間に手を上げたくはにゃいんだけど。


「……な、今何が起きたのだ?」


「俺は……俺は今、猫に往復ビンタされた気がするぞ」

「俺もだ。 

 小さい黒猫がいきなり現れて……俺の頬を目いっぱい打ちやがった」


「なんか……俺目が覚めた気がする。

 キレイな女性に、いい加減にしなさい、って怒られたような。

 なんかスゴイ気持ち良い気分なんだ……」

「オマエ……そういうシュミが……

 しかし実は俺もなんかステキな女の子にダメでしょ、って叱られたような気持に……」


だからそれどころじゃにゃいんだってば。

凄まじい水のにゃがれが襲ったのよ。

素早く高台へ逃げたわたしとイルファンさんは助かるけど。

ぼうっとしてた暗殺族セムの人たちはにゃがされて行くわ。


大丈夫かしら。

砂漠で恐れられる暗殺族セムですもの。

簡単には死にゃにゃいわよね。

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