第72話 助けに行くの?

「く!」


護衛が剣を抜いて皇子を庇うように立つの。

皇子様はいまだ、肩を抑えて苦悶の表情ね。


「さては……これもキサマらの仕業か。

 皇子の身体になにかしたな!」


「ふむ……なんの話だ」

「くくく……ザッハークに虐げられた民の呪いであろうよ。

 我らが知るモノか」


黒い影は嘲笑う声を上げにゃがら皇子と護衛に近づく。


アズダハーグ少年を助けにゃきゃ、と思うのだけど。

にゃぜだかわたしは飛び出す気ににゃれにゃい。

モチロン、辺りにいるパピルザクをぶっ飛ばしてるから、と言う理由も有るんだけど。

今も尖った尻尾でわたしを刺そうと狙って来たパピルザクに猫パンチをしてるのよ。


アズダハーグ少年はエステルちゃんと同じか一つ下くらいの年齢。

日本で言うにゃら中学生に上がったかどうか。

頭では助けてあげにゃきゃと考えてるんだけど。

にゃにかわたしが近付くと彼にとってもっと悪い事ににゃりそうにゃ、そんにゃ気がしちゃうの。


護衛の男は囁くの。


「皇子、私が盾になります。

 その間に逃げてください。

 おそらくエスファハーンはもう遠くない。

 そこまで行けば、門兵たちもいます」


彼は皇子を背にして立っている。

剣を構え、決死の表情。

その前には黒い影が近付く。

闇に隠れたマントのにゃかから銀色に光るモノが取り出される。

刃物ね。


護衛の兵士は中年だけど、鍛えている体形。

おそらく相当にベテランで実力もある戦士だわ。

それでも2対1。

しかも相手は暗殺族セム

一人の兵士を吹き矢を使い一瞬で倒して見せた恐ろしい連中にゃの。


はにゃしかけられた皇子はその言葉が頭に入っていにゃい様子。

しゃがみ込んでいて、さっきまで苦悶の声を上げていたんだけど。

すでに目を閉じて、意識がにゃいみたいね。

大丈夫にゃのかしら。


「皇子!

 どうか、逃げてください」


「くくく……くく……」

「皇子は逃げたくないらしい」


「賢明な事だ。

 逃げても無駄と悟ったのだろう」

「そうだな。

 毒の吹き矢で苦しみながら逝くよりは、刃で斬られた方が一瞬で冥界に旅立つ事が出来る」


わたしの猫のカンを信じるにゃらば、皇子に近づくべきじゃにゃい。

だけど、黒い不気味な暗殺族セムが皇子に近づく。

少年が殺される場面にゃんてみたくにゃいわ。

どうするべきにゃのかしら。

わたしはパピルザクに必殺の猫キックを喰らわしにゃがら考えてるの。

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