第73話 人を助ける

黒いマントの暗殺族セムが近付き、護衛の戦士は剣を振る。

ベテラン剣士の振るう鋭い斬撃。

だけど、どう避けたのかすら良く分からにゃいまま、その剣は空を切る。

暗闇に彼らの身体が溶け込むの。


「くくくくく……

 無駄な事は止めておけ」

「あの皇子のように諦めれば、お前は標的では無い。

 見逃してやっても良いのだぞ」


「ふざけるなっ!」


と、しゃにむに戦士は剣を振るけど、その剣は当たる様子がにゃい。

フッと突然、戦士の脇に白刃の光が見えて。

戦士が腹を抑えてうずくまる。


「うっ……ぐうぅう」


お腹を斬られたのね。

抑えた手の間から赤い液体がこぼれて来る。


「愚かな男め」

「その傷では助かるまいよ」


笑い声が聞こえる。

嘲笑う響き。


護衛の兵士は傷を負いながらも、皇子の前に立ち塞がろうとする。


「……アズダハーグ様、逃げてください。

 逃げて……」


護衛は顔が蒼褪めている。

そのお腹からは血がにゃがれているの。

だってのに、彼はお腹を抑えていた手を外す。

剣を両手で持って、仁王立ち。


「……皇子には手を出させん」


必死で言葉を吐き出す男の人。

でも、もう腕に力がこもっていにゃいし、両足だってフラついている。

血が現在もにゃがれだしてるのよ。


「くくく……苦しみながら死ぬのが好きとは……くくくくく」

「物好きな男だ……くくくく」


右から左から影のような男たちが戦士に迫る。

2対1じゃにゃい。

卑怯だわ。

それ以前に。

あんにゃ必死の男の人を笑うにゃんて。

そんにゃ権利があなた達に有るの?!


わたしは体が熱くにゃっていた。

胸のにゃかからにゃにかが湧き上がる。

行動せずにいられにゃい。

頭のどこかであの少年に近付かにゃいほうが良い、そんにゃ思いもあるのだけど。

現在はそれどころじゃにゃい。


だって、あの護衛の戦士。

子供の頃から皇子を見て来た、と言っていた。

タダのお仕事だったら、自分が死にそうににゃってまで王子を護ったりするもんですか。

彼にとって皇子は大切にゃ存在にゃのだ。

わたしにとってのエステルちゃんや、ヘレーナさん。

大切にゃ家族を助けて戦う。

わたしと一緒。

見捨てておけるもんですか!


わたしの身体から湧き上がる力。

彼を助ける。

あの皇子を助ける。

そう決めた途端、わたしの身体からは熱いモノが溢れ出ていた。



封印解除ステータスオープン

【投擲能力強化】

【命中率向上】


わたしは腕に持ったモノをにゃげつけた。

黒い影のようにゃヤツらに。

にゃにをって?

もちろん、腕に持っていたサソリの魔物ダェーヴァよ。

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