第71話 砂の国の頂点
兵士は竦んでいた。
闇の中、黒いマントを羽織る人影。
だけど彼だって戦う男にゃんだわ。
勇気を振り起すように声を上げる。
「てんめええぇらぁ。
長い棒の先に刃の着いた槍を人影に向かって振るおうとする。
ところが兵士はそのまま倒れるわ。
その喉に凶器が突き立っている。
吹き矢ね。
「ぐ……あぐぁ……ぐはっ」
兵士は槍を取り落として、喉から無理やり吹き矢を引っこ抜く。
矢が抜けて、血がにゃがれている。
キズ自体は小さく見えるけど、兵士はそのまま喉を抑えて悶えるの。
「くっ……
毒矢か。
兵嚢に薬が有った筈だが」
皇子の護衛は腰の袋を探ろうとするけれど、それどころじゃにゃい。
黒いマントを着た人影が二つ、彼と皇子に近付いてくるんだもの。
「おのれっ!
キサマら、この方が誰か分かっているのか。
キサマら風情が刃を向けて良い方では無いのだぞ」
「……くくく……くく」
「分かっている。
アズダハーグ皇子だな」
「標的はそんなちっぽけな子供では無い」
「その子供の父親だったのだがな」
マントを着た人影が答える。
不気味な笑い声。
「……父親だと?!
キサマら……この方の父親と言ったら……」
「そうさ、この砂漠の国の皇帝」
「蛇王ザッハークこそが我らの標的だ」
黒い人影は凄まじい事を言いはにゃった。
皇帝ザッハーク。
この砂の国に住む多くの民族、多数の国や地域を統べる最大勢力の頂点。
ペルーニャ皇帝を暗殺するのが目的と宣言したのよ。
「……!……バカな!
砂漠の蛮族風情が手を出していい存在かどうか。
その程度も分からんのか」
「くくくくく。
さてどうかな」
「皇帝も
「皇帝がエスファハーン方面に逃げるようなら、我らがここで仕留める算段だったのだがな」
「こちらに来たエモノはこんなちっぽけな子供であったか。
残念ではあるが、それでも皇帝の息子だ。
ここで仕留めさせて貰おう」
やはり。
多分、そうだろうと思っていたけど間違いにゃい。
多数のパピルザクがわたしたちの
あの時のように、
それを利用して、皇帝の軍隊も襲ったのね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます