第69話 蛇王

そんにゃカンジでわたしはパピルザク相手に大暴れ。

多数いたサソリのバケモノもさすがに数を減らしてきた。


良いわよね。

皇子の護衛らしき戦士の人には見られちゃったけど。

エステルちゃんと同じか、一つ下くらいの少年皇子。

サソリに襲われてるのを見捨てるのはイヤよ。

助けてあげたいわ。


今後、皇子様にゃんかと関わりににゃるコトはにゃい。

戦士の人たちも信じられにゃい様子だし。

魔物ダェーヴァを倒して逃げちゃえば、夢でも見てたってコトににゃるんじゃにゃいかしら。


どうしたのかしら。

わたしの首輪に着いた宝石が光をはにゃってる気がする。

実際に辺りの暗闇を照らしてるワケじゃにゃいのよ。

『ネルガルの瞳』

バステト様がそう呼んでいた宝石からにゃにかが溢れてる。

そんにゃカンジがしちゃうの。



「皇子、肩をお摩りしましょうか?

 何だコレは!」


アズダハーグ少年に近づいた男が、驚きの声を上げる。


わたしはパピルサグと戦ってるからあまり視線は向けられにゃい。

声だけ聞いてるの。


「あの宝石。

 黒く輝くあの瞳を見たら僕の肩から!」

「……こ……これは?

 蛇、蛇なのか……」


「おい、どうしたんだよ?

 皇子様、大丈夫なのか」

「キサマは来るな!

 一般兵に見せられるモノでは無い」


「チッ……なんだよ。

 ヘッ、ワリーがな、見えちまったぜ。

 呪われた皇子ってウワサはホントウらしーや」

「キサマ!

 どこからそんな話を?」


「アホか。

 誰でも知ってるっての。

 ザッハーク皇帝が暗黒神と取引したってな。

 皇帝となるのと引き換えに冥界神ネルガルに捧げものを約束したんだろ。

 それで皇帝の座に就いたザッハークは取り立てに来た冥界神に差し出した。

 事もあろうに自分の息子を暗黒神の生贄に差し出したんだ」

「………………」 


「蛇王ザッハークとその呪われた息子。

 そんな話、ペルーニャの人間ならみんな知ってら―な」

「………………」


「俺はおとぎ話みたいなモンだと思ってたけどな。

 まさか、ホントウに皇子様の肩から蛇が生えてるとは……

 神の呪いってのは実際にあるんだな」

「…………違う」


「俺は、俺は幼い頃から皇子に仕えている。

 皇子の身体は何回も見た。

 こんな肩から蛇など出て来た事は無い!」


……肩から蛇?

わたしは寄ってくるパピルザクに無双してる最中。

エイヤっとぶん殴って、セイっと放りにゃげて、トリャっと蹴っ飛ばす。

あまり余裕はにゃいのだけど。


チラっと視線をにゃげる。

地面にしゃがみ込んだ皇子と寄り添う戦士。

戦士に隠れて皇子の姿は良く見えにゃいのだけれど。

その肩からなにかウネウネと蠢くモノが出ているのが見えてしまった。

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