第51話 お嬢様

 「お嬢様!」


知らにゃい人がいきなりファオランさんに抱き着くの。


サーカスの前でやってたパフォーマンスに乱入してしまったファオランさん。

かにゃり目立っちゃってたわね。


そっちは放っておいて。

わたしたちは縛られた女性を解きはにゃつ。


シルクハットにナイフの刺さった男は泡を吹いて倒れちゃった。


道化師の方は慌てて大声を出してるわ。


「あはははは。

 皆さん、ウチの見世物はどうですか。

 あのチャイニャの子、ウチのこれからスターになる予定の子でして。

 あはははっは。

 いやいや、事故なんかじゃないですよ。

 ホントにこーゆー出し物なんですって。

 ああっ、お客さん。

 どこ行っちゃうんですかー」


ウマイ事言って誤魔化そうとしてるけど。

集まった人たちも怪しいと感じたのね。

他所へ行ってしまう人がたくさんいるわ。


エステルちゃんやステュティラちゃんが縄をほどいて。

的扱いされてたお姉さんは立ち上がる。


目元からはにゃみだがこぼれてるわね。

死にかけたんですもの。

トーゼンね

わたしは顔に近付いて、涙をにゃめとるの。


「あはははははー。

 猫ちゃん、舌がざらついて痛いよー。

 ありがとね。

 もう充分、これ以上はメイクが落ちちゃうわ」


お姉さんは笑ってくれた。


「あはははははー

 マジ恐かったー。

 あのナイフ男、アル中の気あるのよ。

 今日ばかりはマジ死ぬかと思ったわ」


イロっぽい服装でハデな化粧のお姉さん。

死にかけたってのに意外と立ちにゃおりが早いわ。



「コラッ!

 これに懲りたら酒一切やめなさいよ。

 そうじゃないと団長に告げ口して、叩き出して貰うわ」


お姉さんは倒れてたシルクハット男にビンタ喰らわせて無理やり起こしてるの。


「そりゃヒドイ。

 夜一杯ひっかけるのだけは許してくれ」


「なに言ってんの。

 アタシ死にかけたのよ。

 あの娘が助けてくれなかったら、どうなってると思ってんのよ」


思ったよりも逞しいお姉さんね。


「みんな、ホントにありがとうね。

 特にそっちのチャイニャの子、マジ感謝!」


そう言ってお姉さんはサーカスのテントに帰って行った。



ファオランさんはと言うと。

一回りくらい年上の女性に抱き着かれている。


「お嬢様、ホントにケガは無いですか。

 先程は生きた心地がしませんでした」


「シンイー、落ち着いてー。

 無事だってバ。

 ホントにケガ一つしてナイから」


どちら様かしら。

地味な色合いの服装。

顔は美人なのに目立たにゃい。

裏方さんみたいな雰囲気ね。



「でも良かったわ

 シンイー、あなたに先に逢えて。

 もしも爸爸パパに先に逢っちゃったりしたら、どうしようかと思ったワ」


ファオランさんとシンイーと呼ばれた女性は抱き合ってる。

知り合いにゃのね。

にゃかが良さそう。

家族みたいに親密にゃ雰囲気。

お姉さんにしては年がはにゃれてるし、お母さんにしては近いわね。

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