第52話 シンイー


「あっ、みんなゴメンネ。

 私の……えーと母親?……のシンイー。

 シンイー、こちら私をここまで送ってくれた人ナノ。

 エステルちゃんとステュティラちゃん。

 それにエラティさんと黒猫の男爵ね」


わたしはみゃーお、と軽くシンイーさんに挨拶しておく。


ファオランさんのお母さんだったのね。

にゃにか……今紹介する時ファオランさんが一瞬戸惑ったような言い方してたみたいだけど。


「皆さん、ありがとうございます。

 …………ファオランお嬢様……

 母親なんて勿体ないお言葉です。

 私は唯の使用人で結構ですから……」


「何言ってるの!

 父と籍入れたんでしょ。

 間違いなく、私の母親じゃない」


複雑そうにゃ話が有りそうね。

あまり立ち入って聞かにゃい方が良いかしら。


わたしはそう思うけど……ステュティラちゃんは遠慮しにゃかった。

いつも通り困った娘だわ。


「なになに?!

 おもしろそー、どーゆーこと?」


ファオランさんの母親は数年前にはにゃくにゃったらしい。

ファオランさんのお父さんは人を何人も雇ってる大商人。

お父さんに雇われていたシンイーさんがいつの間にか、お父さんと恋仲に。

そして再婚した。

そう言う話みたい。


娘さんからしたら……それにゃりに複雑にゃはにゃしだと思うのだけど……

ファオランさんはあっけらかんと話す。


「ウチの父親ったら、シンイーに手を出したクセニ。

 お妾さん扱いで結婚せずに逃げそうな様子だったから、シメテやったノネ。

 キチンと結婚しなかったら、アゴにワタシの自慢のハイキック喰らわすワヨ、ってネ」


ファオランさんはチャイニャドレスから伸びた足でキックのポーズ。


「お嬢様!

 はしたないです」


「へへへー。

 ダイジョーブだったカシラ?

 シンイー、あの親父気付いてないのネ」


「うーん。

 ジュアン商会の仕事に精を出しておられて、毎日要人の元へ挨拶に駆け回っていますから。

 今のところ、旦那様はなにも変わった様子はございませんが……

 しかし、逆にファオラン様の名前を一切出さないのが不自然な気も致します」


「あーー、仕事に没頭してるノネ。

 ならそんなもんヨ。

 シンイー考えすぎヨ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る