第40話 世界海

ザザザザザザッパーン!


船が水音を立てる。

砂海の小型船ニャビールジャーエヒがザーヤンテ川に着水したの。

この小型船ジャーエヒって、砂の海を移動したり、陸の上を飛ぶだけじゃにゃくて、水の上も移動できたのね。


考えて見たら船にゃんだからアッタリマエ。

水の上に浮かんで移動するのがトーゼンの乗り物。

にゃんだかもう、フツーがどういう状況にゃのか、分からにゃくにゃっちゃうわ。



「やったー、河だ!

 アタシ初めて」


歓声を上げてるのはステュティラちゃん。


「アタシは小さい頃来た事あるけど……

 久しぶりに見ると、こんなに大きかったんだ

 ヴォウルカシャってこんな風かしら」


エステルちゃんも楽しそう。


世界海ヴォウルカシャはこんなもんじゃない筈さ。

 この大河が流れ着くガーヴフーニーの湖より遥かに広いんだ」


ライールさんが応える。



「ヴォウルカシャ……ってナニ?」


訊ねてるのはファオランさん。

そう、わたしも気ににゃってたわ。

ヴォウルカシャ。

今まで聞いたコトのにゃい言葉だわ。



世界海ヴォウルカシャっていうのはね。

砂船乗りシンドバットたちの間で言われる伝説なの」


「そう、この世界のどこかにこの河みたいにいっぱいの水で溢れかえった真実の世界海、ヴォウルカシャが有るってな」



エステルちゃんとライールさんが説明する。

砂船乗りシンドバットに憧れる娘さんと砂船乗りシンドバットのお父さん。


世界海ヴォウルカシャ

砂の海じゃにゃくて、水でいっぱいの海。

つまり……普通の海って事ね。


わたしは砂の海を見て、あまり深く考えてこにゃかったけれど。

この世界では海ってどうにゃってるのかしら。

川があるんですもの。

フツーに考えたら川がにゃがれ着く先は海。


このザーヤンテ川は、ガーヴフーニーの湖に着くとライールさんは言ってたわね。

海に辿り着かずに湖でオシマイ。

そんな川も有るでしょう。

他の川はどうにゃっちゃってるの。



「一面の水で溢れかえった場所~。

 そんなの、なんか怖いわよ。

 陸地が全部水に呑まれちゃいいそうじゃない。

 アタシ、あんま泳ぎ得意じゃ無いの」


ステュティラちゃんが言う。


そうか。

ステュティラちゃんにとっては一面の水で出来た海の方が非常識にゃ光景にゃんだわ。


そんにゃステュティラちゃんにエステルちゃんは言い返す。

瞳をキラキラと輝かせて、語る少女。


「そんな事無いわ。

 この世界の中心に世界海ヴォウルカシャが有るって伝説。

 お父さんに聞いてから、ずっと憧れていたのよ」

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