第23話 砂の海の小型船

砂の海の小型船ニャビールジャーエヒ

ゆったり広がる砂の上に浮かんだ白く塗られたヨット。

三角の帆が砂の海からの風を受けてはためいている。


エステルちゃん、ステュティラちゃん、ファオランさんが次々乗り込む。

船の中央で舵を握るのはライールさん。


にゃんだか、今日は濃い青色のサングラスをしてるわね。

船乗り風ではあるけど、カッコツケかしら。


「砂の海はキレイだけど、日中あまり見過ぎないようにするんだ。

 光の照り返しで目を傷めるんだぞ」


「分かってるよー」


言葉を返しながら、エステルちゃんはターバンを目深にかぶる。

風で飛んでくる砂粒を避けるだけじゃにゃいのね。

日光から目を守るためでもあるんだわ。


ファオランさんはターバンの扱いににゃれにゃい風。

見よう見まねでターバンを顔に巻き付けるけど、ミイラ男みたいににゃっちゃってるわよ。


「よーし、じゃあ浮かせるからな。

 みんなは客室キャビンに入ってろ」


「わたしも手伝う。

 ルドラ様の風の力があると便利だよ」


「……ん、そうか。

 じゃあ、エステルの力見せて貰おうかな」


ニッとライールさんが笑顔を浮かべる。


ヨットの中央、舵がある場所から半地下に少し降りていく場所が有って。

壁で覆われているわ。

ここが客室にゃのね。


エステルちゃんに抱き上げられてたわたしにゃんだけど。

エステルちゃん、にゃにかするみたい。

ジャマしにゃいようにしましょ。


わたしはトトトっと客室に降りていく。



「揺れるから、座ってるんだぞ」


「掴まってた方がいいよ」


ライールさんとエステルちゃんが言う。



「そうなの、アタシ小型船、ハジメテなのよね」


「ワタシもです」


客室キャビンには広いイスが並んでいて。

ソファーと呼ぶには少し硬そう。

ベンチに薄いクッションを乗せたモノね。

いくつか支柱がある。


ステュティラちゃんとファオランさんは支柱に掴まる。

わたしはベンチに飛び乗って、クッションにツメを立てておきましょ。




「ルドラ・シヴァーヤ様。

 波間に叫ぶ猛き風よ。

 我に貴方様の御力を貸し給え」


エステルちゃんのキレイな声が響いて、周囲に風が吹いてくる音が聞こえる。


「おっ、良い風だ。

 さすがだぞ、エステル。

 これなら楽にイケルぞ」


ライールさんが舵を握って、力を入れるような動作。

船の帆が一気に膨らんでピーンと張る。

強い力を受け止める三角のセール


か、と思うと。

床が動いて。

船の角度が先頭を上に急角度。

斜めに傾く。


いやーん。

ビックリするじゃにゃい。

ツメを立てておいてよかったわー。


そして、次の瞬間。

わたしの身体は宙ににゃげ出される。


斜めににゃった床が水平に戻るの。

船の先頭が上方向に上がっていた。

今度は後方の客室が一気に上昇したのね。


客室の天井に貼りついたわたし。

窓から外を見ているの。


さっきまで岩場の近くの砂の海にいた船。

窓からは岩場が下の方に見える。


……これって……もしかして。

この船、陸地の上に浮かんでいる?!

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