第19話 リリー

「最近街に現れた白いネコ、リリー。

 ああ、しってみゃすぜ。

 みゃかみゃかカウァイイ娘猫ってんでウワサにみゃってやす。

 まだ小娘らしいんですが、後半年もしたら、絶対イロっぽい猫に成長しみゃすから、私も今のうちに声をかけちゃおうかなーみゃんて……いけにゃい」


ハッとグレイさんは口を閉じるけど、もう遅い。

シャム猫のお姉さんは白い目で見てる。

もちろん、わたしも冷たい視線でグレイさんを見てるわ。




ファオランさんがはぐれちゃったって言う猫よ。

リリーと言う名の白猫。


昼間エステルちゃんがファオランさんをエスファハーンへ連れて行くと言ったの。

彼女は喜んだけど。


「でも……リリーがマダ見つかってない」


ションボリもした。


「リリーちゃんは心配だけど……

 でもこのままじゃ商隊とも完全に別れ別れになっちゃうよ」


ファオランさんは親のいる商隊がエスファハーンに向かうとは知っていたけど、その後の旅の予定は知らにゃかった。


「週末に砂船で出発しよう。

 船なら馬車旅に十分追いつける。

 それまでにリリーちゃんを探そう」


「……ハイ」




迷い猫。

それこそわたしの出番じゃにゃい。


猫たちに顔の広いグレイさんに頼みに来たの。


「分かりみゃした。

 みゃー天使サマの頼みとあれば。

 この『逃げ足のグレイ』必ず、白い美猫を探し出してみせみゃす」


さてと、それじゃ『虎タル』さんの所にも行って見ようかしら。

わたしは茶虎で太ったボス猫の顔を思い出す。



「『虎タル』の旦那?

 みゃー様……旦那に女子猫の事を訊いても……無駄足になりますよ」


シャムのお姉さんが言う。

そうにゃの?


「ええ、あの旦那は……

 あんにゃんでもボスですから女子にモテなくもニャいんですが……

 全然気づかにゃい朴念仁にゃんですよ~

 女子のコトにゃら、このグレイの方がお似合いですよ」


モテる?

あの『虎タル』さんが?

へー。

うーん。良く分からにゃいけど。

丸々と太った大きい体格のトラ猫。

確かに頼り甲斐はあるのかも。


「フッ。

 そうでみゃす。

 このグレイ、カワイイ女子猫のことにゃらば。

 この街の居るほぼ全員の女子猫に声をかけたコトがある男でさぁ。

 任しといてください」



いや、ゼンゼン自慢するようなコトじゃにゃいと思うわ。

まぁでも確かに適役にゃのかも。

頼んだわよ、グレイさん。

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