その2 荒野のヨット

第17話 膝枕

「へー、チィニャの商人の娘ね」


「うん。そうなの。

 ご両親とはぐれちゃったんだって」


「そりゃ、タイヘンだな」


すでにお家にエステルちゃんは帰ってきてるわ。

ヘレーナさんとライールさんと、昼間の娘のコトをはにゃしてる。

わたしも夕食を済ませたの。


ライールさんもヘレーナさんの膝に頭を乗っけてる。

膝枕ね。

もう、いつでもイチャイチャしてる夫婦だわ。

対抗しておこうかしら。


「あはは。

 みゃー、くすぐったいよ」


わたしはエステルちゃんの足にお鼻を擦り付けて、軽くゴアイサツ。

そのままエステルちゃんの膝の上で丸くにゃる。



「……うん?

 その猫、首に宝石みたいの着けてるぞ。

 いつの間にそんな飾り付けたんだ」


「何言ってるの、父さん。

 昔から首輪に宝石着けてたじゃない」


「あれ……そうだっけか、ヘレーナ?」


「……そう言えばいつからだったかしら……

 まあでも最近じゃないわ。

 前からよ。

 ライールは留守にしてる事が多いモノ。

 アナタが居ないうちに着けたんじゃないかしら」


ヘレーナさんたちが言ってるのはわたしの首輪とそれに着けた宝石のコトね。

ネルガルの瞳。

先日、森の奥で魔物ダェーヴァの中から出て来た宝石。

あの非常識にゃ猫耳幼女神バステト様がわたしの首飾りに改造したの。


エステルちゃんたちはみにゃれていにゃいハズにゃんだけど。

にゃんだか前から有ったと思い込んじゃってる。

猫耳幼女神バステト様の不思議能力ね。

あんにゃんでも神様にゃんだわ。



「……それでね。お父さん」


「ん、どうした?」


「お父さん、来週からまた航海に出発するのよね。

 て事は今週末はヒマよね?」


「……ヒマって。

 うーん時間が取れない事も無いが……

 なんだ、エステル、父さんと遊びに行きたいのか?」


「そんなワケ無いじゃない。

 父さんのニャビールジャーエヒ借りられないかな?」


ジャーエヒ。

確か小型の船の事ね。

砂海ニャビールを渡る小型船ジャーエヒだったと思ったわ。



「船を借りて、ファオランさんをザーヤンデ川の先。

 エスファハーンまで送ってあげられないかな」


「エスファハーン?!」

「エスファハーン?!」


えーと、わたしまだそんなに交易都市ホルムス以外の場所知らにゃいのよね。

ザーヤンデ川は……川というからには川にゃんでしょう。

エスファハーンと言うのは街の名前。

今日聞いた、バゼル先生とエステルちゃんの話によると大きい街らしいわ。


その名を聞いたヘレーナさんとライールさんは驚いてる。

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