第16話 夏の王宮

わたしは護衛団の建物の表で聞き耳を立ててるの。


封印解除ステータスオープン

【スキル発動】

【聴覚強化】



「ねこ~?!」

「ねこですか?!」


「はい。

 この街でウチの猫とはぐれタ……行方不明。

 迷い猫、アタシ探し回った。

 そのウチに商隊が出発してしまったネ」


ステュティラちゃん、エステルちゃん、ファオランさんね。

商人の娘さん、ファオランさんはこのホルムスで親と別れ別れにゃってしまった。

その原因が猫だったらしいの。


「親御さんからしてみたら、アナタが行方不明になったんだと思いますけど……」


「そうよ、外国で両親と別れちゃったら大変じゃない。

 猫なんかのために……」


「なんか、チガウ。

 猫ダイジ。

 リリー、ワタシの一番のトモダチ」


「そうですね。

 それは分かります。

 私だって、みゃーがいなくなっちゃったら、必死で探すわ」


「そう。猫、トモダチ、家族」


「はい。猫は家族の一員です」


なんだかエステルちゃんとファオランさんは盛り上がってる。


「ワタシの猫、リリー白猫。

 キレイで人気」

「そうなんですね。

 ウチのみゃーは黒猫です。気品があるって評判なんです」


気品があるって、テレルじゃにゃいの。

そう。

エステルちゃん、わたしのコト必死で探してくれるの。

いい娘だわー。





「そいで……なんだって女の子をワターシのとこに連れて来るのーよ?!」


エステルちゃんが向かった先はバゼル隊長のところ。

赤毛のハンサムだけど、口調が独特な変わった男の人ね。


「バゼル先生が一番物知りなので……

 ホルムスからエスファハーンへ向かう道のりをご存じないかと思いまして」


「この子が美少年ならいくらでも力になってあげるのーに。

 女の子連れて来られてーも。

 ガッカリなのよーね」


エステルちゃんたち新人に教育もしてるバゼル隊長。

ファオランさんが頭を下げる。


「商隊、エスファハーンへ向かう言ってた。

 ご存じナラ……教えヤガレ……チガウ、教えてクダサイ」



「……アンタたち、エスファハーンのコト知ってるの?」


「聞いたことは有ります。

 ペルーニャ帝国の大きい都ですよね。

 たしか大河ザーヤンテの近くにあると聞きました」


「うん。合ってる。

 けど……それ以上に、あそこは……

 現在のペルーニャ皇帝ザッハークの夏の王宮なのーよ」

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