第81話 瞳の中の瞳

象の魔物ダェーヴァ、ヴィルーパークシャは歩み続ける。

その動作はゆったりとしているんだけど、足が途轍もにゃく大きい。

ドンドン近付いてくるの。


弓を持った戦士が矢を弦に番えるけれど。

標的を狙い定めて。

そのままうずくまる。


「うわーーっ。

 俺のムスメ、ムスメが……!

 まだ小さかったのに‥‥…」


頭を抱えて叫び声を上げる。


ムスメさん、にゃにが有ったのかしら。


そんにゃコトを気にしている余裕はあまりにゃかった。

周りの戦士たちが次々と呻き声を上げて倒れていくの。


「……オレのオレの金が……」


「悪気は無かったんだ。

 ホントウだ、ふざけただけのつもりだったのに……」


「何でだよ、なんでイジメるんだ。

 僕、悪いコトしてないのに……」


「愛してる、って言ってくれたのに。

 アレは嘘だったのかよ」


みんな口のにゃかでブツブツ言って、他の人のコトにゃんて見えてにゃい。

大声で泣きだしてるようにゃ人もいる。



「みんなしっかりして。

 アレを見ない様にして逃げるんだ」


励ましてるのはエラティ隊長ね。

彼もかなりつらそうな顔をしているのだけど。

剣を構えて何とか持ちこたえている。



【危機感知】

【危険:精神攻撃】


わたしも見物してる場合じゃにゃい。

アレをにゃんとかしにゃきゃ。


あまり派手に動くと気づかれちゃうかもしれにゃいけれど。

一番隊の戦士たちは頭を抱えて呻いてる。

黒猫のわたしのコトを気にしてる余裕があるとも思えにゃい。

エラティ隊長には分かっちゃうかも。

だけど、今さらね。


わたしは進み出て、頭を抱えている戦士たちの近くへ行く。

戦士が放り出した槍に狙いを付ける。

槍の柄の部分をエイっと猫キック。


スゴイ勢いで槍が飛んで行く。

ヴィルーパークシャの背中に突き刺さるわ。

背中の部分にもある目に刺さった。

その目は閉じて、赤いモノが流れ出すけれど。

巨大にゃ象の魔物ダェーヴァ

全体を見ると大したダメージじゃにゃさそう。


ヴィルーパークシャが頭部をこちらに向ける。

此処から攻撃したの気付かれちゃったかしら。


その額にある大きにゃ一つ目。

瞳が真円に近いほど見開かれ、にゃかの虹彩がわたしを捉える。


どんどん瞳が大きくにゃっていく。

その水晶体に映しだされる光景まで見えるくらい。

大きくにゃっていくわ。

その巨大にゃ虹彩のにゃかには黒猫も映し出されるの。


倒れている戦士たちの横に隠れている黒い小柄な猫。

わたしだわ。

その映し出された光景のにゃかのわたしの瞳。

わたしの瞳が大きくにゃっていって。

その瞳に映るヴィルーパークシャの大きにゃ瞳。

その大きにゃ瞳に吸い込まれて行くようにゃ感覚。


【危機感知】

【危機感知】

【危険:精神攻撃】

【危険度:上】

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る