第80話 精神攻撃

ヴィルーパークシャが左前足を上げる。

振り下ろす、その先にはサイラスや槍を持った戦士。


その瞬間。

戦士たちの隣に人影が現れる。

ぴょーんと素早くサイラスと二人を抱えて跳び下がる。


三人を抱えてるのはエラティ隊長ね。

浅黒い肌の美少年。


魔物の足元から跳び跳ねて、他の一番隊の人たちの所へ。


ふうっと三人を下ろす。

戦士たちのにゃかでは小柄な体格にゃのに力持ちね。

それとも、これもアシャー様の加護かしら。

エラティ隊長は重力を操れると言うわ。


「良かった!」

「さすが『天のエラティ』」


「おいっ、サイラス。

 どうしたんだ?」


「お前らもどこもケガして無いじゃないか。

 何、蹲ってんだよ」


エラティ隊長に助けられた三人。

まだ自分の身体を抱えてまともに反応していない。

ウワゴトのように口のにゃかでブツブツ言ってる。


「……なんでなんだよ……」

「チクショウ、チクショウ」

「ヒデェ、ヒデェよ」



わたしの視界に文字が見える。


【危機感知】

【危機感知】


【危険:精神攻撃】

【危険度:上】



エラティ隊長がしゃがみ込む。


「どうしたんです? 隊長」


「どこかやられたんですか?!」


その顔から汗がにゃがれてるの。


「今、あのヴィルーパークシャに近付いて……

 大きな一つ目と一瞬目が有ったら……

 スゴク嫌なコトを思い出しちゃって……」


普段ニコヤカな笑みを浮かべるその顔が。

今は苦悶の表情。

眉をしかめて、長い睫毛の下には潤んだ瞳。

にゃきだしそうにゃ表情。



精神攻撃?!


ハッキリとは分からにゃいけど。

ヴィルーパークシャ。

あの魔物の仕業!


どうやらアイツに近づいて大きにゃ一つ目で見られると。

人間は嫌にゃ記憶を思い出す。


人間て誰でも、思い出してしまったら。

その場でアタマを抱えてにゃにもしたくにゃくにゃる。

そんな記憶の一つや二つは持っているモノ。


わたしだって……

若い頃のコトを思い出すと……

わぁーわあわわあぁーーーーーーー!!!

と叫んで身悶えしちゃう思い出が幾つもあるわ。


そんにゃ嫌な記憶がよみがえっちゃうの。

サイアクの魔物ね。

ヴィルーパークシャ。

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