第65話 一番隊

「えーとシラスくん。

 着いて来たいなら、良いよ。

 ただし、ピンチになっても僕は助けないからそのつもりでいてね」


「他の一番隊のみんなも。

 ここからが本番だ。

 僕も本気で戦う。

 周りをフォローする余裕はあまり無くなるかもしれない

 ケガしても自力で上手く逃げ帰ってね。

 ナシールさんだったら「逃げる奴は許さん」って言いだすトコロだけど。

 僕は文句なんて言わないからさ。

 魔物ダェーヴァとの戦いで死ぬなんてバカみたいじゃない。

 死なない様に頑張ってね」


「はい、エラティさん」


「エラティ隊長、心得てます。

 足手まといにはなりません」


にゃんだか、隊長としては凄いセリフのようにゃ気がするけど。

みんにゃ普通に受け入れてる。

いつものコトにゃのかしら。


さすがにサイラスは面食らったのか。

目をシロクロさせてるわね。


わたしもこの人たちと一緒に行きましょ。

泉への最短ルートを進みたいだし。

人間が通れる道は狭くても、わたしは猫よ。

人が歩くのは難しい繁みの中だって、木の上だって走って行けるわ。


別にエラティさんが美少年だからじゃにゃいのよ。

わたしだって森の奥は勝手が分かっていにゃいわ。

一緒に行く方が安心だし。

それにこのルートは危険が多そう。

わたしの猫のカンがビンビンに反応してるの。

一緒に行けば少しはフォロー出来そう。



と、わたしが考えてるうちにもヴァウーザカが数体現れる。

毒針を煌めかせ、襲ってくるハチの魔物。

  

大きな盾を持った人が針の攻撃を受け止める。

周囲の戦士たちが手にした剣でハチを仕留める。

上空を飛び、剣を避けるヴァウーザカ。

降りて来たところを槍が貫いた。


「よっしゃぁ!

 仕留めたぜ」


槍を使っていたのは、さっきのサイラスって人ね。

ただの根性悪でもにゃい。

それなりに実力もあるんじゃにゃい。

 

「やはり、魔物ダェーヴァが多すぎる」

「この森はニャーヒード様の森。

 通常なら、危険度の低いアルミラージにたまに遭遇する。 

 ごくまれにヴァウーザカに出くわす程度だ」


「それがアンズーが何体も出現。

 ヴァウーザカもひっきりなしとは……」

「何が起きてるって言うんだ……」



そうにゃの。

普段はそんな森なのね。

原因はわたしにはわからにゃい。

だけど、感じるわ。

泉の方から、何か淀んだ暗い空気。

多分、その方向から魔物ダェーヴァが発生しているんだと思うの。

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