第60話 ダマスカスブレード

エラティ隊長がアンズーを二体叩き切ったけれど。

獅子の貌をした大鷲は他にもいるの。

爪を戦士に向けて素早く舞い降りる魔物ダェーヴァ


護衛団の人たち、苦戦してるわね。

槍を持った戦士、剣を持った戦士がアンズーを斬ろうとすれば魔物ダェーヴァは上空へと逃げる。


弓矢を持った人たちが狙いを付けるけど、当たらない。

素早く逃げるの。

矢がたまに刺さっても2メートルを超える魔物ダェーヴァ

一撃で落ちてはくれない。



「はぁはぁ、アンズーがこんなに強敵だなんて」


どこかで聞いた声だと思ったらアレシュ青年じゃない。

舞い降りるアンズーの爪を避けにゃがら、剣で斬ろうとしている。

すでに大分疲れてるみたいね。


少しフォローしてあげようかしら。

わたしは地面の石をみゃーんと猫キック。


アレシュ青年のいる方向へ滑空しようとしていた、鷲のバケモノ、アンズーが急に頭を押さえて飛行が乱れる。

わたしの小石はみごとに獅子の鼻面にヒットした。


「今だ!」

「なんだ? どうしたんだコイツ」


「いいから、切れっ」


アレシュ青年も斬り付けるし、周りの戦士も今がチャンスと斬り付ける。

彼等が持っているのは片刃の曲剣ね。

刀身が三日月のように曲がった造り。

柄の部分は飾りが着いてるわ。

宝石のような煌びやかな石だったり、意匠を凝らした彫り物だったり。

ペルーニャ帝国で作った刀剣の特徴らしいわ。


エラティさんが持った剣の柄は飾り気の無い物だった。

替わりに刃そのものが美しい。

シャムシール程の曲線ではにゃく、ほぼ直剣、先端部分のみが丸みを帯びる。

刃の峰には波のようにゃ、樹木の年輪のようにゃ文様。

宝石にゃんて着けられてにゃくても、それだけで美しく神秘的。


数人がかりでアンズーは倒された。

アレシュ青年も何回かダメージを与えたみたいね。


「これが、アンズー。

 タフな魔物ダェーヴァですね」

「ああ、手強いバケモノ野郎だぜ」


「それを一撃で倒すなんて、エラティ隊長さすが過ぎます」


「エラティさんはな……あの剣がスゲェよな」

「ヴェーダ国で作られたダマスカスブレードな。

 ペルーニャでも同じモノは簡単に作れないらしいぜ」


「さらにアシャー様の加護があるものな」

「アシャー様の加護を貰ってもフツーの人間じゃ使いこなせないって言うぜ」


「うん、それが剣の申し子と呼ばれる所以だよな」

「ああ、『天のエラティ』あの人ならではのあだ名だな」


「アシャー神の加護?

 ……ってどんななんです?」


訊ねてるのはアレシュ青年ね。

わたしも少し興味あるわ。

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