その4 魔物討伐隊

第51話 ライールさん

エステルちゃんは出かけた。

魔物ダェーヴァが増えてると言う森へ。

討伐隊の支援部隊、集合時間に余裕を持たせた出発。

多分、ステュティラちゃんの家に寄っていくのね。


わたしはもう少し遅れて行こう。

屋根の上を走って行けば余裕で追いつく。

自分の身体を舐めて、毛づくろい。

溜まった自分の抜け毛は庭で吐き出す。


と、誰か家の方に急いでやって来るわね。

嗅いだコトの有るニオイ。


ライールさんじゃにゃい。

エステルちゃんのお父さん。

ヘレーナさんのダンナさん。


髭が生えてて、髪の毛もボサボサ、日焼けした肌は赤く少し汗臭いわ。

少しと言うか大分汗臭いわね。


これでお風呂に入って、ヒゲを剃れば割とハンサムなのよ。

逞しいカラダに整った顔立ち。

鼻は高くて、金髪青い目の美男子。

浅黒い肌、漆黒の黒髪の美人ヘレーナさんと並ぶと美男美女。

国際的美形夫婦ね。


だけど、現在のライールさんは、美男子なんて思えにゃい。

もう少し汚れたら浮浪者と間違われてもおかしくにゃい外見。

仕方にゃいんだけどね。

ライールさんは砂船乗りシンドバット

商隊カルヴァーンの水夫長。

今回も旅に出かけて二ヶ月ぶりの帰還だわ。

毎日ヒゲ剃りにゃんてしてられにゃい。



「ヘレーナ!

 エステル!

 帰ったぞ!」


「あら、アナタ。

 早いじゃない。

 帰港の予定は半月は先って聞いてたわよ」


「風の神様の機嫌が良くてね。

 船旅が順調だったんだ」


と、ライールさんはヘレーナさんに喜び溢れる顔で抱き着く。

回転しながら、抱き上げてるわ。

歌でも歌い出しそうにゃ雰囲気ね。


「待って、待って!

 分かった。

 ライール分かったから、お風呂に入ってその匂いをなんとかして来てよ。

 そうしたら幾らでも抱きついて良いから。

 私まで汗臭くなっちゃうわ」


ヘレーナさんは抱き着かれるのを嫌がってる。

だけど、口ではそう言っていても目元が笑ってるわ。


「ちぇー、分かったよ」

「途中で公衆浴場ハンマームに入って来れば良かったのに」


「いやだよ。

 ヘレーナやエステルの顔を一刻も早く見たいじゃないか。

 公衆浴場ハンマームでゆっくりなんてしてられるか。

 ………………

 あれ、エステルはどうしたんだ?」


「……あのね、ライール……

 落ち着いて聞いてね、エステルは…………」


わたしはそこで家から出かけるわ。

この後騒々しくにゃるのは分かり切ってる。

男の人の叫び声ってあまり聞きたくにゃいわ。


「なにーーーー!!!

 エステルが!!!

 護衛団と一緒に森へ行ってる?

 それも森には魔物ダェーヴァが増えてるだって!!!

 危険じゃないか、危険じゃないか、危険じゃないかーっ!!!!!」


ほらね。

スゴイ大声が聞こえて来た。

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