第52話 逃げ足のグレイ

わたしは屋根の上をヒョイヒョイと走っていく。

振り返ると広い砂の海ニャビールが見える。

午後になると陽射しが照り返し、暑くギラつく砂なのだけど。

今は午前中、そこまで暑くはにゃいわ。

陽射しが反射してキラめく砂が美しい。

近付くと、細かい砂粒が飛んで来て目に入ったりもする迷惑な砂の海ニャビールなのだけど。

遠目に見る分には幸せね。



「アネさん、どちらに行くんですかにゃ?」

「みゃーさま、俺も御一緒しやすにゃ。

 天使サマと一緒にいられるんにゃんて光栄ってモノですみゃ」


にゃんだか下の方でトラ猫と灰色猫が言ってるけど。

気にしにゃいで行っちゃおう。

わたしは屋根の上で移動速度を上げる。


封印解除ステータスオープン

【スキル発動】

【速度向上】



「みゃ?!

 にゃんて素早い、さすがアネさんにゃ」

「おおっ?!

 しかし逃がしやせんぜ。

 俺もこの界隈では知られた『逃げ足のグレイ』でみゃす。

 追いついて見せますみゃ」


灰色猫は『逃げ足のグレイ』にゃんて呼ばれてるの?

それって逃げ出すんだから、あまり自慢できるにゃまえじゃにゃいと思うんだけどにゃ。

下をチラっと見て見ると、確かに片目に傷の有る背の高い灰色猫は早い。

すごい速度で通りを走っていく。


通りには人たち。

色んな国の人、ここは交易都市ホルムス

この砂の国の住人らしい、浅黒い肌の人。

白い肌に金髪青い目の人も居れば、黒い肌の人もいる。

その足元を灰色猫は駆けていく。


ボスの大きいトラ猫は、背もあるけどそれ以上に横にも広い。

太った猫はその逃げ足に全然ついていけてにゃいわね。


でもわたし屋根の上を移動して、そのまま街の塀から外まで出ちゃうのよ。


「にゃんと、塀を乗り越えて街の外までいくんですかい」

「俺たちにはマネできにゃいですみゃ」


「さっすが天使様」

「さっすがアネさん」


「そこにシビレル、アッコガレルーですみゃー」

「そこにシビレル、アッコガレルーですにゃー」



わたしがホルムスの塀まで行って見ると。

すでに外に人が溢れかえっていた。

護衛団の戦士たちは早いうちから集結していたみたいね。

わたしが塀の上から数えたら、100人を越える大人数。


赤いターバンを着けてる人が多い。

戦士の赤。


中には白いターバンで一部だけ赤く染めている人間も混じっている。


「駄目だよ、ステュティラちゃん。

 怒られるよ」


「えーーーっ!

 だって護衛団の試験に受かったのよ。

 戦士の赤いターバンを巻くモノじゃないの」


エステルちゃんとステュティラちゃんも来てるわね。

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