第57話 舞う黒猫

「じゃあ、『虎タル』さん、『逃げ足のグレイ』さん」


さて、わたしは二人に頼みごとをするの。


「あの娘、分かる。

 あの白い肌で大人しそうなおんにゃの子。

 白いターバンを巻いて、赤い部分を横に垂らしてるカワイイ子よ」


「ヘイッ、分かりやすにゃ」

「あの娘がどうかしやしたかですみゃ」


わたしが指してるのはもちろんエステルちゃん。



「あにゃたたち、あの娘を守ってあげて欲しいの。

 あの娘はわたしお世話ににゃってるお家の娘さんにゃのよ」


「おおーっ、アネさんの家族ってワケですにゃ」

「みゃー様がお世話になっているのにゃら、

 俺らにとっても恩人ですみゃ」


「任しといてくだせぇ。

 この『虎タル』ダテにボスじゃありませんぜ」

「フッ、この『逃げ足のグレイ』

 天使サマに言い付かったお役目果たして見せましょう」


うん。

頼んだわ。

それはそれとして。


「アネさんとか天使サマって言うな、って言ってるでしょー!!!」


二匹の顔はちゃんと引っかいておくわ。



「じゃあ、頼んだわよ。

 この森では魔物ダェーヴァが増えてるの。

 あにゃたたちも気を着けるのよ」 


周りにいるのも戦士たちや戦士みにゃらい。

ボス猫たちが戦うにゃんて思っちゃダメ。


護衛団の人たちでも敵わにゃいような強敵が出たり。

にゃにかトンデモにゃい事件が起きたらわたしに知らせるの。

わたしは森の奥、泉の方に行くわ。

 

そう言い聞かせて、わたしはその場を後にする。





封印解除ステータスオープン

【跳躍力強化】

【気配遮断】


わたしは木の更に上、先端の方に登るわ。

先端の細い枝をしならせて、その反動で宙に舞う。

木から隣の木へ飛び移った小柄な黒猫のわたし。

人が居ない森の奥に辿り着いたら地面に降りてくの。


上空を飛んだ時に森の全体像は見えていたわ。

中央にある泉らしき水場。

こっちの方ね。


木の上からみゃーんと枝から枝へ飛び跳ねて地面まで駆け降りたわたし。

素早い黒猫にゃの。

降りて来る時にわたしの向いてる方向は変わってる。

自分が向いてるのが北だかみにゃみだか、人間だったら分かりはしにゃい。

だけどわたしには猫の勘が有るの。

おヒゲと尻尾をピンと立てるとにゃんとにゃく分かっちゃうのよね。

これは多分、バステト様が操れるようにしてくれた猫侍の力じゃにゃい。

本来の猫の野生の能力ね。


泉は北西の方角だった。

そっちに向かって草の中を駆けていくわたし。


まだ見えはしにゃいけど、近い位置に大勢の人間が似た方向に進んでいくのが分かる。

護衛団の本隊の人達ね。


わたしのコトを知ってるエステルちゃん、ステュティラちゃんは森の入り口で大人しく待ってるハズ。

それ以外の人たちには気付かれてもそんにゃに問題はにゃいわ。


わたしはあまり警戒せずに護衛団の人たちの近くを進む。

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