第8話 女神ニャーヒードの森

わたしは森を進む。


森。

この森は清浄の女神ニャーヒード様がホルムスへの贈り物としてくれた泉を中心に出来てると言われてるわ。

森には樹々が生え、草ばかりじゃなくて花も咲くの。

この砂漠の世界では珍しいオアシスにゃのね。


だけど美しいばかりじゃない。

そこにはダェーヴァと呼ばれる魔獣も現れる。

危険な場所だわ。


そんな森を、草の中をわたしは駆けていく。


いたっ。

エステルちゃん。

短めに切った髪。

大人しそうな雰囲気の美少女。

この砂の国の住人にしては白い肌。

少し日焼けして赤くにゃってる

青みがかった瞳。

可愛いわー。

もう孫みたいに思っちゃってるの、わたし。


あらっ。

誰かしら。

エステルちゃんは誰かを抱き起こしてる。

お婆ちゃん?。

頭からマントを被って全身が隠れてるから良く分からないけど、お年を召した雰囲気の人。

アッ、顔が見えたわ。

やっぱり、皺だらけの肌。

多分結構なご老人ね。

何故ここにいるのかしら。


この森は子供たちだけや、お年寄りだけで入ることは禁じられてる筈の場所にゃの。

にゃのににゃんだって。


そう思って観察すると。

このお婆ちゃん、もしかして護衛団の人間。

マントから覗く麻のターバンは赤く塗られている。

戦士を現す赤。

護衛団のマークが入った盾と槍を背にゃかにつけてるけど。

その武具、お婆ちゃんには重いんじゃにゃい。

フウフウ言いにゃがら倒れてにゃかにゃか立ち上がれずにいる。


エステルちゃんはさすが老人思いね。

お婆ちゃんを助け起こしてる。


「お嬢ちゃん、すまないねー」

「いいえ、大丈夫ですか」


うーん。

まさかと思うけど。

さっきステュティラちゃんにも付き添いで試験官の男の子が付いてた。

このお婆ちゃんがエステルちゃんの付き添い?!


曲がった腰、声はしわがれてるわ。

恐らくは相当の年寄りじゃにゃいの。


ひどいわー。

12歳のエステルちゃん。

実戦試験に付き添いを付けるのは理解できるし、トーゼンだけど。

これじゃイザという時、エステルちゃんを助けるどころか、純粋に足手まといよ。

お婆ちゃんだって可哀そう。


「あの、肩をお貸ししましょうか?」

「あらあら、ありがとう」


わたしが憤慨してる間にもエステルちゃんが肩を貸してお婆ちゃんと歩いていく。

どうしようかしら。

さすがに猫がここで現れて、お婆ちゃんの手を引くのは無理があり過ぎるわね。


私は様子見しにゃがら、魔物ダェーヴァの気配を探る。

エステルちゃんを守らにゃきゃ、と思って来たのだけど。

このお婆ちゃんも守らにゃきゃいけにゃいのかしら。

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