第9話 松島と男鹿
日曜、施設の中ではメイズが一番人の入りが多くなった。他の部署からもヘルプが来るなど大賑わい。
迷路の中の狭さと暗さが故になかなか回転率が上がらない。
掲示板などだけでなく鉄平が助けたカップルの一人が幽霊とのやりとり(もちろん幽霊はみえていない)をSNSに載せ拡散されて一時は
「あの迷路屋敷にはお化けが出る」
「怖い…無理!」
などネガティブなカキコミが多かったものの、数日して急展開。
全国からオカルト研究会や幽霊マニアが駆けつけ、テレビ局の取材、それを見た人々で連日大賑わい。
この施設も例の「三日間」が放映されて以来、いやそれ以上の大賑わいとのことだ。
モニターの前には松島がいて不審者や悪戯など不審な動きをしてる人がいるのを逐一チェックしていた。
そこに水分補給しにきた男鹿がやってくる。
「お疲れ様、男鹿くん」
「おう。たく人が増えるのはいいけど立ち往生したり、悪戯する奴も増えるし、迷子も増えるし大変だな」
「そうよねー、こんなな何年ぶりかしら。三日間の時よりもすごい。昔の繁盛してる時みたい」
「ですよね、て……またあそこ詰まってないか」
この二人は長らく共にしている。松島は二十数年前に学生のバイトとして、途中結婚出産を挟んでからの復帰してパートをしている。
男鹿はオープン当初の客からのバイトを経ての従業員になっている。
「……これであの噂も消えるかしら」
松島がボソッと言った言葉に男鹿はハッとする。
「だといいけどさ……」
「こんだけ人が入れば……でも長年見てるけどこの人の入りはあっという間に引くものよ」
冷静に松島は言う。少しため息混じりで辛そうである。
「松島さん、どうしましたか」
「貧血よ……」
「無理しないでくださいよ」
「生理きたからホッとしてる」
その松島の言葉に男鹿は飲みかけていた水をは少し吹き出す。
「動揺しすぎ、まぁほっとしたわ……」
「んんん、そのっ」
男鹿は松島の不敵な笑みに慌てる。
「ここのメイズが終わったら私たちの関係もおしまいかしら、って思ったのにね」
「……」
そう、二人は実は関係を持っている。お互い結婚しているためダブル不倫になる。
そして立っていた噂はメイズだけでなくここの施設の閉館のことであった。老朽化もあり昔から囁かれていたが番組三日間の取材や男鹿たちスタッフの健闘もあって延命していたようだ。
「……あそこの誘導してきます」
男鹿は口元を拭いて事務所を出ていった。
「ほんと、なにやってんだか」
松島はモニターに目を移した。
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