第3話

「さてと、北の街に着いたは良いが、何からしようか?」


旅と言っても具体的な事は計画していない。

この先どうするかなんて予測すらできない僕は計画性なしに旅へと足を踏み入れてしまったのだ。


「とりあえず、せっかく来たんだから街をぶらぶらと歩いて見るのはどうだろう?」

お兄さんは人差し指を僕に向けて微笑んだ。

「そうだね、行くあてのない旅に付き合って上げてもいいよ」

僕は上から目線でそう答えた。

「おう」

お兄さんはそう言って笑った。


この人はオブラートに言葉を包むのが得意なんだ。

だから僕はこの人と旅をしていても嫌な気を起こさ無いのかもしれない。


「そろそろお店が見えてくるぞ」

お兄さんがそう答えると同時に目の前の視界がパッと広がりお店が見えてきた。

オシャレなお店や可愛いお店、カラフルに彩られているお店などが並んでいる。


「お兄さん、あのお店はなんのお店?」

僕は自然とお兄さんに質問していた。

「ん?あれはね、雑貨屋さんだよ、あそこで色々な物が買えるんだ。」

と言い、あの店は僕もよくお世話になっているよと付け足した。

「へぇ…色んな物が売っているんだね」

僕も納得すると次のお店を指差して、あのお店は?と尋ねた。


「あれは…そうだなぁ…ケーキ屋さんだよ」

僕はあまり行かないけど…と後を濁す。

「そうなの?僕は甘い物好きなんだけど」

僕は意外そうにお兄さんを見た。


「何だ?その目は」

茶化した様にお兄さんは僕をつつく。

キラキラした目をしても…とお兄さんは続けて言った。

そんな顔をしたのか?あの僕が?

僕は耳を窺った。


5歳の時から意志を持ち、それからずっと無感情のままに生きてきた。

偶に微笑む時はあるけれど、それだって幼い頃にしかそんな表情を見せなかった。


ーこの人なら僕は全ての感情を取り戻せるー


今ならそう思うことが出来る。

だから僕は彼の手を強く握った。

ーENDー



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檻の中の小鳥は空を飛べない 梨。 @Yuzunasi

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