第134話 女同士、オンナ同志?

「護道君と付き合うと了承した日の夜、泣き疲れて、うつらうつらとしてたんだけど、私の心に話しかけてきた女の人が居たの。女の人の正体はわからないわ、でも、名前はシノンって言うのね」


「うん?ちょっと待った!えーーと、夢を見たの?」(早乙女)


「違うのよ、それが。彼女は護道君のところで妹を診てもらってもダメだと言うの。だって、手術が遅くなればなるほど成功率が下がって予後が悪くなるって事を聞かされてるのに、なぜか手術は延び延びになってて、私の婚約話ばかりが先行してるのってオカシイって言うわけ。それは私たちの家族が感じていたことなんだけど、それに、日本では執刀医が居ないって話なのに、ゴッドカンパニーなら大丈夫だからって入院先を護道君の系列の病院にしてもらってそこで面倒見るからって。海外での手術の話は全然無くて、それを言っても大丈夫だからって。護道君のご両親もそう言うばかりで。こんな内密なお話を知ってて、しかもその理屈は筋が通ってるのって、シノンて言うこの女の人は誰なのってナゾに思ったわ。でも、彼女は私のモヤモヤしてるところを明確にしてくれて、しかも親身になってくれるのね」


「待って、そのシノンって女の人の姿は見なかったってこと?」(ユミ)

「だから、心に直接話しかけてくる感じで。でも、まぶたにその人の影絵みたいな像が映ってたように思うの。ちょっと私と同じような高校生っぽい感じの人で、でも、話し方が大人な感じで」


「なぜ、高校生っぽいって感じたの?」(ユミ)

「それは、何て言うか、雰囲気というか、声の響きと言うか、まだ大人ではない声なの」

「まあ、そういう大人っているからね。まあ、いいわ、続けて」(ユミ)


「シノンが言うには、『私と契約してくれれば妹の事や護道の事もどうにかしてあげる』って、そんな事を言ってきたわ」

「夢?幻聴?マンガの読み過ぎ?それともアニメの見過ぎ?」(早乙女)


「香織、わたし、マンガとかアニメとか、あまり見ないから。私は文学少女なんで、文学作品ばかりを読み漁ってる人だったから。子供の時だけよ、マンガとかアニメは。それに、ここの特進を目指してたから、中学時代は頑張って勉強してたからね」

「そうか~、紫苑は真面目だもんね」

「香織もそうじゃない?」


「なるほどね、先ずは紫苑の話を全部聞きましょうか。で、紫苑、あなた、契約したの?」(ユミ)


「それなんだけど、泣き疲れてたとは言っても、気味が悪いじゃない。わたし、悪霊か何かだと思ったわ。そう、悪夢かもとかも思った。ほら、よく悪魔が契約を迫るってのがあるじゃない、だから、声が聞こえて来ても無視したわ」


「えっと、それで終わり?」(ユミ)


「それがね、その日から話しかけてくるようになったのよ。夜だけじゃないの、昼間でもよ。わたし、護道君に妹の事を確めたわ。やっぱり大丈夫だって言うだけ。だからオリエンテーションが終わった翌日に妹に会いに行ったわ。そこで医者と看護師が話してることを偶然聞いちゃったのよ。妹はもう手の施しようが無いから大きな発作が起こった時が覚悟の時だろうって。それを聞いて、ドキドキして、居ても立っても居られなくて、いつしか病院の庭に出て、そこにある池を眺めてたのね。心が暗く澱んだ感じで、そんな重い心になったら、目の前も暗くなってたわ。でも、実際は春の日差しが反射してる池を見ているのよ。だけど、見てる景色は暗いカーテンがかかってるみたいになって」


 そう言って、紫苑は両手で目を覆った。

 泣いていた。


 早乙女は、そうっと、紫苑の肩を抱いた。

「大丈夫、ちゃんと話せてるから。辛いかもだけど、私たちは貴女の事を助けたいの。だから、ゆっくりで良いから、話してね」


「ちょっと落ち着こうかしらね」

 そう言うと、ユミは手を上げて子分を呼ぶ。


「元気の出るジュースを持って来てくれる?」

「・・はい、姐さん!」


 直ぐに出て来たのは、赤いジュースだった。

 コップの飲み口に、果肉の赤いカットオレンジが飾り付けてある。


「これはブラッドオレンジでございマッスル!通常のオレンジよりも甘味が強くて、色、香りとも濃厚、アントシアニン、ビタミンCなど栄養満点で御座候ござそうろう!」


 そう言うと、ニヤリとして3人の顔色を伺い、子分は出て行った。


 甘いわ、美味しい、アントシアニン、アントシアニン、アントシアニン!と好評だった。


「子分さん、親分がむっちゃん(藤堂のこと)だから、無理してダジャレを言ってるのかな?」(紫苑)

「カズト、そんな教育をしてたんだ」(早乙女)

「ダジャレについては、紫苑が上手いそうじゃない?変なオンナね、あなた」(ユミ)


「それは、むっちゃんが、あっ、藤堂君の事だけど、彼の幼馴染だから、わたし。だから、ダジャレ遊びをしてたんだ、子供の頃。それで鍛えられたっていうか」

「幼馴染の特権?やっぱりイヤなオンナね、あなた」

「そんなこと言わないの!ユミも紫苑の事が気になるのよね、助けたいんだよね、ホント、素直じゃないんだから」(早乙女)


「わたし、思ってることをズケズケ言うのは、気心の知れた子だけだから、悪く思わないでね、紫苑。それから、イヤなオンナって言うのは、私の褒め言葉だから」

「ややこしいわ、ユミ!だから友達少ないのよね!」(早乙女)

「親友は少なくて良いの。表面的な友達なんかお断りよ」(ユミ)


「えっと、ありがとう、藤原さん」

「ユミでいいわ」


 紫苑は目の縁が少し赤くなっていたが、元気を取り戻したかのように頬を赤らめ、笑顔を見せて、ユミに応えた。

「親友って言ってくれたんだよね、ユミ」(紫苑)


 ユミも頬を赤らめた。

「まあ、お互いに藤堂繋がりってことでね。えへへ、キスはお先に失礼しちゃったけど」


「ごめん、ユミ、キスは私の方が先だから」(紫苑)

「「えっ?」」(ユミ、早乙女)

「子供の頃に、何回か、したから」

 更に顔を赤らめる紫苑。


「紫苑、やっぱ、イヤなやつ!」(ユミ)

「まあ、子供の時だから・・何回もするのかーーいっ!!」(早乙女)



 ※作者の呟き

 まだ続くのか、女子会!

 次は何を子分は持って来るんだ?

 いや、暗いカーテン、それ、どうなった?

 って、なんも考えずに書いちゃったよ、カーテンw

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