第130話 マブダチ

 翌日、ちょいと遅れて登校した。

 挨拶もそこそこにホームルームが始まる。

 副担任が今日のLHR(ロングホームルーム)はちゃんと出席するようにと意味深な事を言った。それと球技大会は、中間テスト後に行われることが決まったということだった。


 球技大会、そんなこともあったっけな~と、これまでの事がとても昔に感じる。

 護道も居ないし、オレの周辺は静かになったもんだ。

 オレに話しかけてくる者は、早乙女とユミと紫苑くらいなものだが、それも少し遠慮気味な感じである。


 二限目が終わり、5分長い休み時間に、田辺中野球部だった3人がやって来た。


「藤堂!護道って、どうなってるんだ?ずっと休んでるみたいだし」

「ああ、ホントにな。まあ、どうでもいいけどね。気になるのか、幸助?」

「幸助はさあ、早苗ちゃんが護道君って何で休んでるのって訊いてくるから、それでさあ、藤堂が何か知ってないかと、なっ、幸助!」(飯野)

「ち、ちげーよ、護道のやつはオレ等の敵だろ?一応、敵の情報を知っておくってのは当たり前の事じゃん」

「目が泳いでたね、幸助」(佐山)

「佐山、流石によく観察してるな」(オレ)

「えへへへ、だって、よく見なくてもわかるほどの動揺の仕方だし」

「ちっ!だったらなんだよ!早苗ちゃんと久しぶりに話したんだから、今度話す時のお土産として、護道情報をだな」

「ちょっと待てよ。早苗ちゃんは護道の事をもう何とも思ってはいないんじゃないかな?だから、幸助、護道はよくわかんないけど欠席してるみたいだってありのままに言うだけで構わないんじゃないかな?」

「うん?なぜ、藤堂が早苗ちゃんの気持ちがわかるんだ?」

「なんだ、そんな事もわかんねーのか?佐山、教えてやってくれ。お前の観察眼ならわかってるんだろ?」

「えっ??えっと、そうだね、幸助は早苗ちゃんのいつもの昔からの様子とここ最近の様子を・・・・なんとかかんとか(汗)・・・・」


 佐山は何となく早苗ちゃんの様子がおかしかったのに気がついていたようだ。

 流石だぜ、佐山!


「あはははは、佐山、その通りだな。オレも気がついてたぜ、早苗ちゃんの様子。ようするに、いつもと違ってオカシイって雰囲気だったよな」

 お前、空気を読んで他人に乗っかるのが、ホントにウマいよな、飯野!


「そうだったか?」(幸助)

「だよだよ(ホッ!何とか観察眼を守れたよ)」(佐山)

「だーー!オレって、バカだよな~~!」(幸助)

「「「知ってる!」」」

「なんだとーーー!!」


 3人とも笑顔だ。

 オレもつられて笑う。

 なんだろ?こんな感じって、なんだろ?

 こいつ等って?


 そうか、こいつ等が居たか。

 オレの高校生生活の目標のひとつ、マブダチを作ること。

 こいつ等は、オレのマブダチで、良いよな?


『マブダチ・・親友ってことだね。うん、君達、親友認定してあげるよ、ぼくが』


『キィ、だったら、ユミや早乙女はどうだ?恋人認定してくれるか?』

『ダメだよ!』


『へっ?なんで?』

『だって、ユミとはあの老人が認めてないんだろ?それと、早乙女とはアレからちゃんと話してないから、今の気持ちはわかんないよね?』


『おまえ、そういうところ、理路整然と言うなよな!もっと、こう、何て言うか、そう、空気を読んでだな、彼女達とオレとの今までの経緯から察することが出来るだろう?好きとか言いあったりしたよな?キスとか、したよな?』


『過去は過去、今はいまだ』

『はぁ?おまえ、それシャレのつもり?何だよ、未だって!』

『未だに、君達には恋人って感じがしてこない。彼女達が聖女なら、恋人であるハズ。つまり、彼女達が未だに、聖女としての覚醒が無いからだ』

『えっ、そっちか!でも、あいつら、どうしたら聖女になれるんだ?』

『ぼくの専門外だけど、試練があるハズ。いや、この前の事件が試練だったかのしれない。ということは、ユミの試練は・・そうか、アレか』

『なんだよ、アレって?』

『とにかく、まずは彼女達と話してみる事だね。もちろん、紫苑とも、ね!紫苑は、一番試練を重ねていたようだし』


『そ・・そうだな・・』

『なんか弱気』

『怖いんだよ、紫苑と話すのが。あいつ、心が元に戻ってるんだろうか?あの魔女に何かやられてたとしたら、オレに対する気持ちはどうなってるかわかんねーだろ?それと、もし、紫苑がキィの言う聖女と勇者の関係通りの感情っていうのを持たないように、魔法か何かを仕込まれていたら?そう考えると・・・・』


『君は勇者なんだぞ!勇者の心得:絶えず前を向け!自分を信じろ!必ず道は開かれん!・・だよ』

 

 勇者か・・キィだけはオレのことを勇者だと言ってくれる。

 もう、それもよくわからねーけど、オレはお前を信じる。

 だいいち、お前の存在がそうさせるから。

 そして、それしか、今のオレには何も無いから。

 それに、自分の能力ってものをもっと追求してみたくなったから。


 ここまでのキィとの会話は超速思考だ。

 たいしてタイムラグは無いハズ。

 よし、気を取り直して次なる目標、青春を楽しむための残る目標は、部活動だ!


「ところでさあ、三人とも、まだ部活は何処にするのか決まってないのか?」

「うん、それなんだよな」(幸助)

「そうそう、それなんだよね」(飯野)

「そうだなぁ、もう野球部ムリだし」(佐山)

「あの部のヤツ等、みんな嫌いだわ」(幸助)

「そうそう、そうなんだよね。だからもう、部活なんかしなくっても青春できるだろ!(女の子とか、女の子とか・・)」(飯野)

「できねーよ!」(幸助)

「僕もできないかも?」(佐山)

「えっ、はは、そうだな、できねーかな?(できねーのか?)」(飯野)


「ふふふふ、そんな君達に朗報だ。オレに良い案がある。放課後、例の所に集合な!」

 オレには自信があったが、問題もあった。

 しかし、やると決めたんだ。

 護道との対決を通して、オレはあることが閃いたのだった。





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