第129話 その後
あれからGW(ゴールデンウイーク)の週となり、早乙女と紫苑は病院に入院、ユミは弥生さんと別荘で過ごし、登校日があっても彼女達3人は欠席していた。
オレは登校してたけどな。
ついでに言うと、護道も生徒会長も登校していない。
更についでに言うと、オレも別荘へとユミに誘われたが断った。
なぜなら、あのおじいと話すのは疲れるし、また裸の付き合いとかいうのはごめんだからだ。
因みにラインのやり取りは弥生さんとだけで、ユミとは認められていない。
弥生さんから得た情報では、GW明け後にビッグニュースがあるらしいのだが。
オレは、心置きなく、キィと勇者の特訓を行っていた。
MPという勇者の組織からも、あの魔女やその仲間にもオレは勇者と認められていないようだが、キィを信じるしかないオレは、もう趣味の様な感じで自分の能力を磨くことに専念し、能力が向上していくことに喜びを感じている。
そして、GW明けの月曜日の朝を迎えた。
「おはよう、カズト!」
「おはよう、藤堂君」
「おう、おはよう!」
最初の挨拶が早乙女、次のが紫苑。
カズちゃんとかって、やはりあの時(映画の時)は魔女のシノンだったか?
「もう、大丈夫なのか、二人とも?」
二人とも身体的に問題は無いかを綿密に調べられたが、早乙女に関しては飲まされた薬の副作用は無く、体調に異変は無かった。紫苑の場合は良くわからないが、何かを同じように飲まされているかもしれず、やはり容態をモニターされていたが、大丈夫のようだった。
つまり、二人は、身体的というより精神的な部分がまいっていたようだ。
「大丈夫。うふふふ、淋しかった?面会謝絶とか大げさだったから」
早乙女は元気そうだ。
「私は、まだ心の整理が出来ないの。でも、藤堂君と藤原さん(ユミ)に助けてもらったのは理解してるし感謝してるわ。ありがとう」
紫苑はまだ完全に自分を取り戻していないのか、あるいは・・・・。
遅れてユミがやって来た。
彼女は挨拶を交わすと、二人と話している。
ユミは紫苑を嫌いではなくなったのかとも思ったが、まあそこはいろいろとある感じなので訊かないでおく。
ホームルームが始まったが、あれから前の担任は外され副担任が臨時で担任をしている。あと2週間経つと高校生になって初めての中間試験が始まるのでそのことについての注意事項等だ。
この学級は特進科なのでテストの内容が他のクラスとは違う学科がある。
それは英語、数学、国語だ。
習う進度と内容が他のクラスとは違うのだ。
その日、オレは学食には行かずに、既に買っておいたおにぎり弁当を例の場所で食べる。それから昼寝だ。これからは深夜の特訓は無しで瞑想によるイメージトレーニングを主体とし、家では勉強をする。
そのため、昼寝はリラックスするためのルーティーンであり、前のように寝不足な訳ではない。
しかしながら、この昼寝ではいろいろな気付きがあったりもするので、単なるリフレッシュという訳でもない。
次第に勇者としての能力が上昇してくるにつけ、夢の中で何かを得ることがあったりするとキィは言っているので、たぶん、そういうことなのだろう。
で、最近の夢には、彼女がよく出てくるのだ。
その
名前はわからないが、あの娘なのだ。
そして、以前に出会った時に見た彼氏が彼女の側にいつも居るのだ。
この日もそうだった。
二人は笑い合い、顔を近づける。
なぜかそこで眩い光が差し込み、二人の顔がシルエットとなって交差する。
オレは、それをドキドキしながら見つめるけど、声が出ないし、身体も動かない。
うっすらと汗をかきながらオレは抗おうともがき、もうすぐ声が出そうになったその時、その場面は急に消え去る。
そして、次にオレの眼前に展開する景色は、風が吹き荒れる荒野だ。
そこを今度は風に抗いながらオレは歩き続ける。
風がもたらす空気の連弾が息の荒くなったオレの口の中に容赦なく飛び込んできて、息苦しさに顔を下に向ける。
何かをオレは呟いているのだが、何を言ってるのかがわからない。
と、やがて風が止まる。
いや、世界が止まる。
なぜなら草が
何が起こっている?
そう思った時、そこで意識がなくなり、どのくらい時間が経過したのか何もわからないまま、スマホのアラーム音で覚醒した。
放課後になり、早乙女達は女性同士で話し合いをするとかで、オレは自分の部屋のあるマンションに速攻で帰った。
シャワーを浴びて、ご飯を炊くように炊飯器をセットしたところで弥生さんからのメッセージに気がつく。
テレビをつけろ?
いよいよビッグニュースってヤツなのかな?
点けたテレビではワイドショーがやっていたのだが、画面の文字を読み驚いた。
『ゴッドグループ激震、身売りか?』
『株価がストップ安!』
『マネーロンダリングや不正経理、収賄、横領など一連の疑惑に検察が動く!』
ついにやったか、じじい!
しかし、などってことは、あの事も司直の手が入ったってことなんだろうか?
だったら、オレのことを認めてもらえるのか?
オレは、あのじじいとまた言葉を尽くす戦いが待っていることを感じた。
ユミ、待たせたけど、恋人ってことをじじいに認めさせてやる。
そのくらいの功績はあった筈だからな。
そんなことを思いながら、その日は勉強に勤しんだのだった。
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