第119話 闇鍋女子会②

 ベテランの仲居さんが去って、直ぐに、備え付けの電話でオーダーを出す。

「そうだ、出してくれた特上すき焼き肉を20人前、それと、A5の特上ステーキ肉を10人前、ステーキ用のタレと、割下のお代わり、白御飯をおひつごと持って来てくれ・・・・かまわんから、直ぐに持って来い!」


「あらあら、ちょっと命令口調は、この異世界では止めといた方がいいですよ」

「ふん、お前の指図は受けない」

「うふふふふ、それは喧嘩を売っているのでしょうか?おほほほほほ!」

「喧嘩か!よし、ワシもやる!武器は何にする?」


「止めよ!!お前たち、食べさせないよ、うるさくしたら!」


「それはダメだ。喧嘩などしない!」

「ちっ!なんだよ、やる気になったのに!」

「うふふふふ、仕方ありませんね~、デューレ、命拾いしましたね」

「何を!アイネ、お前の言い方は癪に障るんだよ!」

「えへへ、やるのか?やっちゃうか?」


「De chaza-re efu roxisone vo runn dasu za-len.........」


「「「うぐぐぐぐぐぐ、やめて・・・」」」


「いいんですよ、あなた達!ケンカ、上等ですよ!ただし、私の言う事が聞けないって言うのなら、いつでも執行しますからね。わかってるんだろうね、お前たち!」


「「「はい」」」


「良いお返事ね。では、今から定例会議を行う。本日は、この世界の鍋料理を食することにする」


「もう食べてるから・・あっ!」(デューレ)


 ギロッと睨むリーダー。


「全部、。全ての食材は厳選されたモノを使っている、らしい」


「いや、そこ、らしいとかじゃなくて、ホントに良いモノを使ってるぞ」


「そうらしい。まずは、この世界の肉鍋を存分に堪能しようじゃないか」


「いやー、さすがはリーダー、話がわかる。普通の肉鍋と言ったら、スパイスの種類が味の決め手であり、あとは薬草の選び方で更なる深みを与えたり、薬効を利かせたりってのが常識なんだが、この世界での味付けには、びっくりされっぱなしだ。この昆布という薬草は凄いな、なんたらかんたら・・・・」


 そう言って鍋の蘊蓄うんちくを語る女子は、外見が明らかに白人系の外人とわかる。

 金髪で青い目をしており、容姿は整っていてスラっとしており、モデルをしているのかと思える女子だ。キャメル色のブレザーに赤リボン、薄いキャメル色と赤のチェックのスカートで、この辺りの学校では見かけない制服である。

 もちろん、白い紙ナプキンを胸元から覆っているのだが。


「うっせーわ!少しは、黙って食え!」

 こう憎まれ口を叩く口の悪い女子は、身体が幼児体形で、お人形のように可愛らしく、ショートボブが良く似合っている女子だ。

 赤いセーラ―カラーに、濃紺地の制服という、ざ・セーラ―服を着ている。

 こちらも、この辺りでは見かけない制服だ。

 もちろん、今は紙ナプキンを付けている。


「おほほほほ、いけませんわよ。私達は、今は!仲間なのですからね。ねっ、リーダー、シノン?」

 このお嬢様風の言葉使いに、その容姿の清楚さがマッチする、この女子は、黒い艶のあるセミロングの髪を後ろに流しており、薄いグレーのジャケットに濃紺の縁取りがされている制服を着ている。

 リボンはスカイブルーで、スカートは無地のグレー、車ひだのプリーツが可愛い。

 もちろん、今は、紙ナプキンで胸元から下を覆っている。

 楚々とした佇まいは、清楚な容姿から滲み出るモノなのか、その浮かべている笑顔はチェリーボーイ達の心を鷲掴みにする破壊力がありそうだ。


「ふん、お前、私をその名前で呼ぶな!何度言ったらわかるんだ?」

 シノンと呼ばれたリーダーの女子は、紫苑と酷似しており、ショートボブでもゆるふわで、前髪サイドの一部を軽くカールしながら垂らし、あとは後ろへ纏めて流す、そこに少し巻きが入っているのは天然なのか、セットしているのか、柔らかそうな髪の毛だ。

 着ているのは、カズトの学校と同じ女子の制服。

 濃紺のブレザーに金ボタン、濃い目の青いリボンをつけて、薄めの紺のチェック柄のスカート。

 やはり、紙ナプキンで胸元から覆っている。


「あらあら、ごめんあそばせ。みなさん、とにかく、お肉をジャンジャン食べちゃいましょう?こんなに美味しいものがタダなんですからね!」


「うむ、そうだぞ!どんどん食べる。それが食材への感謝と贖罪だ。食の神と我らの主に感謝を捧げ、贄となった牛に敬意を払い、しゃぶりつくす、これは傲慢でなく慈悲の心から来る行為であり、神からの好意なのだよ」


「デューレの話は、なんだかわからんが、とにかく、いっぱい食べようぜ!」


「トレ、あんたは、私のシャレもわからんのか?しかし、A5との違い、焼いて食してみるか?鍋の残りの割下は、白御飯にぶっかけてと」


 運ばれてきた肉を横に山のように積み重ねて、デューレは次々と焼いていく。

 その箸捌きは、短期間に彼女が習得したのか、長めのお取り箸を器用に素早く使いこなし、鍋に並べていく。


 A5を焼肉風とすき焼き風で食べ比べ、また、すき焼き用の肉を割下を入れて食べて食べて食べ尽くす。


 こうして、主に肉だけを満喫していった4人は、最後に、底の深い鍋を用意してもらい、そこにたっぷりのスープを入れてもらう。


 もう、あの小うるさい仲居は来ないので、我がまま言い放題のやりたい放題だ。


「A5の肉、やはり、全然違ったな。溶けたね、口の中で!」

「そうか?」

「お前、結構食べただろ?」

「そうか?」

「二人とも、美味しければ良いのです。タダなのですからね」

「いや、アイネは、タダなら何でも良いのだろ?」

「何ですって?それは、私が守銭奴だと言いたいのですか?」

「まあまあ、美味けりゃ―、それで良いってのでいいんじゃね?」


「ふっ、リーダー、あんたならわかるだろ?肉の良し悪しが?」

「ふっ、もちろんわかる。当たり前だ。豚と牛の区別くらいは簡単だ」

「そうか、だったら、あの仲居が言ってたのは、本当の事だと思うか?」


 リーダーは、厳しい視線をデューレに放った。

 そして、ニコリとひとつ頷くと、グラスに入ったほうじ茶を一口飲んだ。


「さて、本題に入るか!」

 そう言って、リーダーが話しを切り出したのだった。

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