第111話 ぶっちゃける

「食べながらでいいから、聞いてくれ!」

「ゲホゲホゲホッ!」(早乙女)

「おい、大丈夫か?水飲め、水!」

「ごめん、ちょっと、口に入れ過ぎてた」

「・・・・藤堂って、優しい!」(ユミ)

「えっ?そんなの、恋人なんだから気遣うのは当たり前だろ?」

「「!!」」

(むう~、私は大っぴらに付き合ったりできないから、なんか、妬ける!)byユミ


「えっ?もう怒ってないの?」(早乙女)

「まあ、お前の態度次第だな」

 咄嗟に出たな・・恋人って?

 ああ、また恋人に戻れるのか、オレ達?


「お前とか、なんか私、カズトの嫁的な?うふん」

「わ、私にも、カズくんはお前とか言うからね、そこ、あんただけじゃないから」

(もう、人前でもカズくんって言うからね!)


「ユミ、カズくんって?そんな関係になったの?」

「まあ、えろえろとね」

「えっ?えろえろ?」


「やめーい!そのエロエロとか、やめーい!勘違いするだろ、早乙女が!」


(ふん、でも、ホントのことじゃない!)byユミ

(えっ?キスはしてるのかな?聞いてないし、でも、私も言ってないし)by早乙女


「えっと、どこまで話したっけ?そうだ、オレは、村雨だ。早乙女が村雨が好きだってのは知ってる。何回もオレだと言いたかったけど、オレは女を信じられなかったんだ。だから、今まで言いそびれてしまった。ごめんな」


「えっと、それって・・突然言われても。だって、ね?」

「カズくんは優しいから」

「カズト、ちょっとそれ、無理があるよ。でも、うれしい」

「だから、いろいろとあったんだよ。でも、オレは村雨なんだ。早乙女は、オレ、藤堂に恋をしたんだろう?でも、それはずっと村雨を想ってきたから、オレを好きになったんだと思う。つまり、早乙女、お前の好きな相手は、ずっと同じ人間だったんだよ」


「うんうん、ありがとうカズト」

「もう、なんか、妬けるわね。私も、早く恋人って認めてもらわないと。もぐもぐ、でも、禁じられた恋もステキかな、もぐもぐ・・ぶつぶつぶつ・・もぐもぐ」


「うん、やっとわかってくれたか、早乙女?」(カズト)

「うん、そういうことにしといてあげるよ」

「うん?」(カズト)

「香織、良かったわね!やっぱり、愛ってステキよね!もぐもぐ」

「うん、愛って、強いよね。もぐもぐ」

「うん?愛か?まあ、そうだな」


 しかし、こいつ等、よく食べるよな。

 オレなんか、まだ殆ど手を付けてないや。


「もぐもぐ、あのね、カズくんは、やっぱり亭主関白かな?」

「う~ん、そう?でも、強い旦那さんって、ステキだよ」

「もぐもぐごっくん、でね、最近、カズくんと話してると、堂々として来てる感じなんだよね」

「もぐもぐ、ぞうかな?ごっくん。わたし、あれから話せてないから。なんか、まだ恥ずかしいよ。もぐもぐ」

「恥ずかしいとか、目の前でよく食べてるけどな」

「だって~、美味しいモノって、最強よね」

「お前、さっき、愛って強いとか言ってなかったか?」

「うんと、好きな人の前で美味しいものを食べるってのが、最強なの」


「だーーー!二人の世界だよ、これは!あっ、カズくんは、護道も倒したんだから、もう学内最強だよね」

 そう言って、オレをチラッと見たユミは、ニヤリと笑った。


「あー、あと言っておくことはだな、オレ、勇者なんだ」


「・・・・・・・・もぐもぐ」(早乙女)

「だからさ、オレの能力で、学校の昼間はオレの分心が勉強をしてるんだ。ちょっと、頼りない感じになってるけど、あまり気にしないで」


「・・・・・・もぐもぐ」(早乙女)

「・・・もぐもぐ・・もぐもぐ・・」(ユミ)

「まあ、まだ修行中だから、勇者とはいえ、そんなに強くはないかもしれないけど」


「・・・・もぐもぐ・・・・・もぐもぐ・・・・」(早乙女)

「えっと、わかった?」

「うん、わかった」(早乙女)

「そういうことだから、勇者のカズくんもよろしくね、香織」

「・・うん・・もぐもぐ」


「早乙女、あんまり興味なさげだな」

「えっ?興味というか、カズトは私にとって、優しい勇者様だよ。カズトの秘密、教えてくれてありがとう。秘密にしとくから。大丈夫だから」

「ああ、ありがとうな」


「藤堂勇者説、ここだけの秘密って、それは、私達の絆だね。うん、そうだよ、密やかな恋に、秘密を分かち合う男と女。もぐもぐ、じびれる!どんあ本より、ごっくん、しびれちゃうわね!」

「うん?説?いや、マジなんだけど」

「うんうん。わかったよ。カズト、私、勇気づけられたから」

「そうよ、カズくんってやさしいから」


「ちょっと、オレ、弥生さんのとこに行ってくるよ」

 そう言って、オレは、彼女達から離れた。


 あれ?

 ひょっとして、ユミはオレを村雨って知らなかった?

 でも、弥生さんは知ってるよな。

 あのジジイも知ってるし。

 それに、勇者だってことは話したぞ!

 彼女の部屋に行った時に、話した。

 そうしないと、オレが彼女の部屋にいきなり居る説明にならないからな。

 いや、そうでもないのか?

 全ては、弥生さんか?

 そうなのか?

 一応、しつこく村雨とか、勇者とか言わなくて良かったぜ。

 オレとしたことが、まだ甘いな。


『そうだね、甘かったね。ちょっと、勇者の書Ⅱが遠のいちゃったかな?』

『おまえー、わかってたなら、止めろよ。ぶっちゃけて、カラぶるって、三振した感じがするから』

『まあ、想定のひとつの可能性として、考えるべきだね。カズトの顔は、もう村雨じゃないんだから、説得するのは、ちと難しいかもな。ただ、紫苑はわかってたようだね』

『シオンか・・その話、後でちゃんとしろよな!』


 オレは、弥生さんの所へ行った。

「やよい・・・・何、これ?」

「うう・・うん?やよいって、呼び捨て~、うふふん。やっと、お姉さんのモノになったのね、勇者様!」


 この人、聞いてたんじゃねーのか?

 向こうでしてた会話を?

 盗聴器でも仕込んでるのか、その可能性はあるな。

 ということは、やべーな、この人。

 部屋も用心が必要か?

 それと、この弥生さんをなんとか・・・・。


「で、何それ?食べた皿とかオレの席の前に置いといて、自分はそのでっかいパフェですか?」

「これ?すぺしゃるジャイアントチョコパフェみっくすスペシャルです。ここの巨大パフェ、インスタ映えするから人気ですよ。後で、お嬢様と一緒に食べることにする予定です」

「えっ?まだ食べるの?」

「これは、毒見と味見ですから。いつものルーティーンです」


 そう言った弥生さんは、艶然と微笑んだ。

 悪女か、魔女か、彼女のことがわからなくなった。

 いや、最初からわかんねーけどな。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る