第110話 キスの件は?
「ユミ、お前、オレのこと、早乙女にどこまで話した?」
「えっ?私は、藤堂は何も悪いことはしてないってことを話したよ」
「いや、だから、勇者とか、その、オレの小学校時代のこととか?」
「何も話してないよ。それは、藤堂から言うべきだと思って」
「なになに?勇者って何?」
「・・・・早乙女、あっちで話さないか?」
「私はいいけど・・」
「私も行くわ。私にも責任があるから」(ユミ)
「・・まあ、いいか。この席、ちょっとアイツらが聞いてるかもしれねーからな。弥生さん、そういうことだから、ちょっと席を外すよ」
「どうぞ~~、ごゆっくり。お嬢様、カズきゅんをよろしくね」
「ええっ?カズきゅん?」
「うふふふ、藤堂って、弥生さんと仲が良いんだ」
「ええっ?そうなの?」
「その言い方、やめい!こっちの壁際の席にするぞ」
弥生さんの所からは、仕切りがあるのと観葉植物があるのとで見えないし、聞こえないハズだ。
飲み物だけを持って来て、席に着く。
オレの前には早乙女、横にはユミだ。
「じゃあ、生徒会長との件を聞こうか?」
早乙女はユミをチラッと見たが、ユミは頷いただけだった。
「生徒会長とは、委員長になって、生徒会の最初の会議で1年の代表になったから、よく話したり生徒会のお手伝いをするようになったの。それから、生徒会で必要な物を買わないといけなくて、その時に高1の行事についての話をついでにするからって言われて、休みの日に買い物に付き合ってもらったんだ。でも、そこから馴れ馴れしくなってきたって感じで。それでね、カズトの試合の日に、朝早くから生徒会室に、手伝いに来いって言われたのね。行ってみると、私一人で。それでね、えっと、会長が私を抱きしめて来て、キスをされそうになったの。わたし、会長を押し倒して逃げたわ。それを、カズト、見てたの?」
「ああ、朝、早めに来て練習が終わった時に、たまたま見たんだ。でも、キスはしてなかったのか?」
「えっ?もちろんよ。もう、無我夢中で突き飛ばしたんだから!」
「そうなのか?・・・・・」
オレは、あの時に見た映像をもう一度脳内で再生する。
しっかりとキスをしている。
なんだ?
どっちが正しいんだ?
う~~ん・・この映像・・そう言えば、もしキスなら、早乙女はこんな顔をするんだろうか?
今、彼女はオレの事を好きだと言った。
そんな彼女が、こんないつもキスしてる感じのキスの表情をするんだろうか?
ほっぺたは赤くなってるけど、このフレンチキスみたいに、がっつりとキスするのか?
ウソついてるようには見えない。
オレのチカラは、向上しているハズだ。
ならどうなんだ?
「わりー、ちょっとトイレに行くわ」
オレは、トイレにへ向かった。
『キィ?そういうことか?』
『みたいだね。気がつくのが遅いな』
『はあ?おまえ!・・しかし、オーラの色っていうのはアテにならねーな!オレは、それでも騙されたぜ』
『だいたい、カズト、オーラの色が見えたからって、それは初歩の話。色なんか、いろいろと感情で変わるし、周りの影響も受けるから、それだけでは判断が出来ないよ』
『何だよ!早く、それを言えって―の』
『カズト、偉そう!マイナス30点』
『お前、それ、まだやってるのか?』
『カズトは、まだ修行の身だろ?仕方がないじゃん』
『お前、流ちょうに話せるようになったのは、オレのお陰だぜ』
『それがどうした?一応、前のようにタメ口を許してるんだから、感謝しろよな!』
『はい、わかりましたよ。うん?だったら、オレって、攻撃を受けたんじゃねーかよ?』
『そうだね。やっと、そこを考えられるようになったか』
『じゃあ、アレか?もしかして、シオンの言動が変わっちまってるのも怪しいよな?』
『・・そうだな』
『あっ?おまえ、なんか隠してないか?』
『うむ、そろそろ言っておいた方が良いか?紫苑は、魔女に操られているぞ』
『はあ?何だ、それ?』
『そこまで自力で考えられるようになったから、次か次くらいに、勇者の書Ⅱを渡さないといけないかな?』
『ちょっと、待てーー!お前、サラっと魔女とか言ったよな?魔女ってなんだよ、それ?聞いてねーぞ!』
『話してないから』
『だから、話せよ。今すぐ話せ!』
『長くなる。〇んこと間違えられるぞ。それでも良いのか?』
『ちっ!じゃあ、早乙女達との話が済んでからな!』
こうして、早乙女とユミの待つテーブルへ向かった。
えっ?
なんだ?
「あっ!おっそーい!」(ユミ)
「ひょっとして、カズト、大だったの?」
「いや、違うから!」
「あやしー!」
「だから違うって!」
「ユミ、そこ、あまり突っ込まないことにしとこ、ね?」
「そうね、ね?」
「お前ら、いいか、オレは怒ってるんだぞ」
「あっ、ごめん、藤堂。わたし、我慢できなくて」
「私も。まだ、お昼をちゃんと食べてなかったから」
そう言う二人の前には、ここの人気メニューの特製ナポリタン大盛りが運ばれていた。
「親分!忖度しときました!」
「うわっ!お前等、またいつの間に?」
「もちろん、親分の為、いついかなる時にも、この店の中ではサービス致しますから!あちらの美人の方にも出しておきましたんで!」
「まあ、いいや。いつも大盛り、悪いな。頂くよ」
ちっ!メシは食ったんだけど、こうでも言わないと、早く向こうへ行かないからな。
「お、おやぶ~~ん!嬉しいお言葉、この時、この瞬間を一生覚えておきます!」
「ああ、もういいから、向こうへ行っといてくれ」
「「「「はいーー!」」」」
アイツら、たぶん、悪いヤツ等ではないと思うんだけど。
席を代わった意味ねーじゃん。
「じゃあ、食べながらでいいから、まずは、オレの話を聞いてもらおうか?」
オレは、もう、早乙女に隠し立てするのを止める決心をしていた。
そう、もう全部、ぶっちゃけるつもりだ。
「早乙女、オレ、村雨なんだよ!」
「えっ?」
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