第104話 いけません、お嬢様!

 藤堂は、あの田辺中出身の幸助達に会いに行った。


 幸助達のオーラを探り、彼等の居所を突き止めて向かった先は保健室だった。


「あっ!藤堂!」(佐山)

「お前、心配したぞ!」(幸助)

「もう大丈夫なのか?」(飯野)


「ああ、いろいろとありがとうな」


「藤堂さん、あなた・・赤いジャージ、似合ってるわぁ〜」

「先生、茶化さないでください。それより、護道君は、どうだったんですか?」


「それがね、病院へ行ったら、面会謝絶になって、締め出されちゃったのよ」

「「「「えっ!!」」」」


「それって、ヤバいって事ですか?」(幸助)


「いいえ、お医者さんは、大丈夫だけど念のためですからって言って、笑顔でしたよ」


「「「「えっ!!」」」」

「その医者、大丈夫なんですか?」(飯野)


「そのお医者さんはイケメンだから、腕は確かよ」

「「「「えっ!!」」」」


「藤堂さん、時々でいいから、保健室に来なさい。あなた、良い身体してるけど、内臓の方が身体の成長に追い付けてないのかもしれないわね。私がチェックしてあげるから、また顔を見せなさいよ」


「えっ・・はい、また、お願いします」



 保健室を後にして、オレ達は護道との対決と野球部の話をしながら帰った。


「対決は、オレが勝ったんだよな?」

「それがだな、この対決は無効だって」(幸助)

「えっ?なぜだ?」

「あの審判のクソコーチが、これは野球部には関係が無く、昼休みに、私が偶々、この子達の遊びに付き合っていたにすぎないからなって言い出したんだ。遊びにすぎないのに、対決とか、そんな物騒な話ではないからって、勝負は無かったことにしちまった。アイツ、ケガ人が出たのを自分の責任にしたくなかったんだぜ。なんて、クソなヤツなんだよ!」(幸助)


「藤堂、僕は野球部には入らないよ」(佐山)

「ああ、僕も入らない」


「あの審判がコーチだなんて、あり得ないよね」(佐山)

「そうだよな、でも、なんで野球部の連中は僕を目の敵にしてんだ?」


「それがだな、どうも、護道が何か手を回してるようだぞ」(幸助)

「そう言えば幸助、お前、早苗ちゃんから何か聞いてないか?」

「それがだな、あいつ、人が変わったみたいに護道を好きになってて、オレに話しかけられるのは迷惑だとよ」


「あちゃー、幸助、これは完全にフラれたな!」

「いや、これでもう、オレ、完全に恋心が消えたわ。まだ藤堂を好きだった後藤の方が良かったよ」

「そうかー。でも、女って、コエーよな。後藤なんて、この前まで、中学時代からずっと好きだった藤堂と少し話せるようになったって喜んでたくせして、もう今は、あの護道を好きになってるなんてな」(飯野)


「ホント、それな!この前の対決で藤堂を応援してたのに、あの変わり様、わかんねーもんだな」(幸助)


「僕は、女子全員を敵に回したのかもな?」

「あははははは、いやー、そう思うわな。でも、藤堂、あそこ(護道との対決の場所)に居た女子達は殆どが護道を好きな連中だったからな。他の田辺中の女子で、お前を好きなの、いっぱい居るからな。それに、男子も、お前に一目置く奴は、結構いるし」(幸助)


「そうだぞ、現にオレ達がそうだし」(飯野)

「あそこに集まっていた男子のほとんどは、護道に賭けてた連中だよ。あいつ等、護道のこと、何にもわかっちゃいないよね」(佐山)


「あのな、ちょっと聞きたいんだけど。僕のファールを素手で捕ったヤツが居ただろ?アイツの事、誰か知ってる?」


「知らないよ」

「あれ、凄かったな」

「あの人、上級生だな。知らないのも無理はないかも」

「そうか・・・」


 オレは3人と別れ、いったんは自分の部屋へ帰った後、ユミの部屋へ転移した。


「どわぁっ!!ご、ごめん!」


「藤堂!!待ってた!」


「えっ?」

 ユミは、ブラジャーのまま、飛びついてきた!


「うう〜、ツラかったよ~~。学校では、話せないし、イチャイチャできないし」


 その時だった!

 バッタ―――ン!!


「お嬢様!!いけません、そんな・・そんな、ふしだらなことをしては!ほら、カズきゅんも困ってしまって、お嬢様を御嫌いになられてしまうかもしれませんよ!」

 いつもの弥生さんだった。


「もう、仕方が無いな~」


「カズきゅん、あまり乙女の裸を見ないように!おじい様に言いつけますよ!」

「えっ!だけどこれは、ハプニングっていうか」


「いつもお嬢様のお部屋へ来られる時に、裸の時って言うのは勇者のチカラとは言え、感心しませんね。それに、あなた方は、まだ恋人としては認められていないのですよ」


 こうして、この夜は、ユミと一緒に、大好きなハンバーグをご馳走になり、またしてもお風呂に入らして貰って、その後、お茶を楽しんだ。


 弥生さんから、通帳とカードを渡され、100万円が取り合えず入っているとのことだった。



 それから、オレは自分の部屋へと戻る。


『さあ、キィ、話してくれ。勇者って何なのか、その目的は何なのかを。そして、勇者は誰と戦っているのかを』


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