第96話 ユミとは・・・
じじいと僕、いやオレは、サウナへ入った。
じじいは、サウナの中で死なないのかと思ったが、平気なようだった。
このじじいは、バケモノか?
背中が痛くないのか?
習ったばかりだが、最初に覚える癒し効果のあるヒールを掛けといてやった。
詳しい説明は省くが、あのラノベによく出てくるヒールと似ている作用のあるものだ。
ただし、これは魔法ではないのだが。
なぜこれを最初に覚えるのか、それはキィとの戦闘訓練が激烈だからだ、とだけ言っておこう。
オレは、じじいに護道との一連の出来事を伝えると、ユミが調べていたことも教えてくれ、共闘関係を構築した。
当然、幼馴染のことは喋らない。
当然だろ?
誰が片想いの話なんか、しゃべるものか。
しかも、このじじいに喋ったら、いいようにバカにされる。
一応、今は交渉中なので、弱みは見せられないからな。
ユミは何をしている、あるいはしようとしているのか?
それは、会社の話になる。
護道家の会社、ゴッドグループはフジグループと競合する分野があり、フジは新参のゴッドの、儲かれば何をしてもいい的な商売の仕方に手を焼いていた。
そのため、何かゴッドの弱みが無いかを探っていたのだが、ある噂があることを知り、それを突き止めるべく動いているとのことだ。
また、勇者候補についてだが、他にも何人か勇者候補としてMPが養成をしており、そろそろ勇者としての認定が誰かに下ることになっているらしい。
内紛は、その件もあって起こったとかいう話だった。
そして、勇者というのは、MPの最大戦力にして、最大の叡智の源でもあるとういうことらしい。
つまりは、MPを統べる者ということだ。
その後継者を育成する過程で、いろいろと揉め事が起き、勇者選定においても、いざこざが起こったというのは、もっともらしい話しだ。
では、今の勇者は誰なのか?
じいちゃんは、わしではないと言った。
だったら、キィはなぜオレを選んだ?
その候補者たちより、なぜオレを?
まさか、キィというのは複数いるのか?
『居ないよ。君、勇者が複数いるというのは有り得ないんだ。なぜかは、今は言えない。君、まだ駆け出しだからね。それを知ると訓練の妨げになる。初代で経験済みだからね。でも、僕も今の勇者を知らない。コンタクトが無い。だが、知っていた者がいたから、僕と君を出会わせたんだろ?君のじいちゃんの顔を僕が知らないのは、当たり前だ。僕は、500年ぶりに目を醒ましたんだからね。彼が勇者に近い存在だというのはわかるけど、勇者じゃないね』
『おかしいだろ?キィを知っているのは、初代勇者だけだって言ってたじゃないか』
『だから、それは初代にも事情があったってことだろうな。約束したし(超小声)』
『とにかく、わからんということか』
既にじじいはユミに話したことを知っているようだが、僕は、改めて話をした。
僕は勇者として認められたけど、じじいにぼくの家が無くなったことを話し、それまで育ててくれたじいちゃんやばあちゃんが居なくなったことを包み隠さず話したのだ。
じじいは何かを考えているようだった。
しかし、もちろん勇者の修行についてのキィのこととかは、まだ話していないし、ユミにもそこまでは話していない。
ユミには、勇者として認められたので、一人立ちを強制的にやらされ、一文無し状態からのサバイバル訓練をしているとか、ちょっと盛って話していた。
「カズ、ワシはお前を認める。男に二言はない。だから、正直に言おう。どうやらMPはお前を切り捨てたようだな。つまりは、お前は勇者と認められなかったという事だ。だから、お前の勇者としての修行とかは無意味になったようだな。勇者として認めたにも関わらず無一文で放り出すとか、有り得ないだろ?勇者を育てるのに多くの月日とカネと労力をつぎ込んでいるという話だ。もし勇者として認めたなら、よりMPとの繋がりを密にするように行動するはずだろ?それに急にお前を育てていた者たちが居なくなるのもおかしい。勇者として認めたとか言いながら、
「つまり、オレは用無しで、MPはオレから手を引いた。というか、見捨てた・・ってことか・・・」
じじいの情報からだと、そう考えるのが普通だ。
だが、オレはキィにより勇者認定をされたんだ。
キィに認められたら、MPに認められるものと勝手に思っていたけど、そういうことなのかな?
MPは、何がしたい?
キィをオレに使った者の真意がわからん。
「そうだ。そして、そういうことなら、悪いが、ユミとの恋人としての交際は諦めてくれ。お前の勇者の話をユミから聞いた時から疑問に思っていたことだ。まあ、そうやすやすと勇者が手に入るとは思ってはいなかったがな。だが、ワシはお前を気に入った。お前次第では、今後ユミとの関係を認めてやらんでもない。お前の素質と能力は、まだまだ伸びるだろう。今は、ユミが何と言おうが、ユミとは友達付き合いまでに
「ありがとうございます、おじい」
「くくくく、しおらしく、じじいからおじいになったか、くくくく」
「おじい、オレはユミさんを諦めていない。そして、勇者もだ!おじい、あなたには感謝をする。そして、おじい、あなたにホントの勇者はオレであることを近いうちに証明してやるよ。おじいの目は節穴でなかったこと、オレを認めてくれたこと、オレは倍返し以上に、おじいに恩返しをするから」
「ふふふふふ、わははははは!よく言った、小僧!大きくなれよ!アソコもな!わはははははは!!」
(こいつは、MPの勇者より本物の勇者になるかもしれんな。こいつを見ていると、ワシの若い時を思い出す。こいつのくじけない意思の籠った目やイケメン顔もワシと同じ匂いがする・・・もう少し、ワシも若ければ・・クソッ!)
いや、アソコの話はするなよ、じじい!
ユミの前では、そんな事を言わないように言っておいたけど、このじじいは絶対に言うと確信した。
何かわからないが、MPという組織は胡散臭い。
それに、あのじいちゃんとか、ばあちゃんはずっとウソをついてたのか?
勇者じゃないから教えられないって、秘密主義だったからな。
あの人たちの名前も知らないし、教えてくれなかったのは、そういう事だったのか?
オレは、また、身内に騙されていたっていうことか・・・・。
もう、泣かないし、何が起こっても耐えられる。
オレは、勇者なんだから・・・。
キィは、裏切らないよな。
オレは、勇者だよな。
『カズト、君は勇者だ!MPとか、どうでもいい。僕が認めているんだから』
『キィ、信じていいんだよな?オレ、精神を病んで変な幻覚症状を起こしているんじゃないよな』
『なに、それ?君は勇者。これは、事実。そして現実。僕の存在も現実だ!今度、人前に出てやろうか?』
『えっ?秘密にしなくてもいいの?』
『MPっていうのがもう君を監視していないのなら、いいんじゃないかな』
しかしながら、MPってのは何なんだろうな。
ヒトを人間ともなんとも思っていない扱いをしやがって!
今に、見てろよ、MP!
お前等、オレを切ったことを絶対に後悔させてやるからな!
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