第85話 勇者の書Ⅰ

『まあ、よくやった。でも、まだまだ実践では使えねーよ、お前!』

「ちょっと、いいか?お前なぁ、言葉遣いが汚い。何とかならねーのか?」


『それは、お前を手本にしてるからだろ!』

「えっ?そうなの?」

『お前の言葉が、汚すぎるんだよ!』


「だったら、オレ・・僕、言葉遣いに気を付けることにするよ。お・・君もそうしてくれたまえ」

『かしこまりー』

「それは良いのか(丁寧な言葉なの)?」


 こうして、オレ・・僕は、これからは丁寧に話す事に決めた。


『では、君は勇者の駆け出しとして、ぼくの承認を得た。拍手!ぱち・・ぱち・・ぱち・・。まばらだな、クスクスクス』

「おま・・君、もう少し、盛り上げてほしいと思いますけど、おちょくってんだろ!!」


『カズトは直ぐにカッカする。マイナス10点!』

「えっ?もう、次の試練は始まってるのか?」


『当たり前だろ?僕が消えたら、君はシンの勇者になったって事になる。すぐにそうなるわけないだろ!』

「そうか、hayaku kiero・・だったら、頑張るよ!君と別れるのは寂しいけど、仕方が無い事なんだな」


『愚かなり、カズ!君は何にもわかっちゃいないな。さあ、無駄口はここまでだ!これからは、現実世界で修行をする』


 カギがそう言い終わると同時に別の神社の境内に転移した。


 そこは、やはり、真っ暗だった。

 が、子供の姿をしたカギだけは光っている。

 その光にほのかに浮かぶように、社殿が黒い姿で佇み、狛犬がこっちを見ている、ように思えた。


 そして、例の箱を鍵が抱えていた。

 シュールだ!

 箱を開けるアイテムであるハズの鍵が箱を抱えている?


 オレ・・僕は笑ってしまったが、次の言葉に真面目な顔にならざるを得なかった。


『カズ(いつの間にかこう呼んでいる?)、君に勇者の駆け出しアイテムを授与だ!』

 そう言って、カギは僕に「勇者の書Ⅰ」を手渡した。


『ページをめくりなさい』

 ちょっと、エラそうなカギだが、僕はそんなことより、その「勇者の書Ⅰ」に意識を釘づけにされた。


 そして、言われたとおりにページを繰ると、パァーとその勇者の書が光り、僕の身体の中へ入って行った。


「えっ?おい、大丈夫なのか?」


『ふん、これで駆け出し勇者の出来上がりだ!何が出来るようになったのかをよく吟味すること。では、訓練だ!』

「まてまてまてーーーー!!えっと、何ができるかっていう説明はないのか?」


『教えて欲しいのか?』

「はぁ?わからね・・ないので、是非とも教えてください」


『むう。仕方が無いね。もう少し、君、謙虚を学びたまえよ!』


 スカートを履いた、おさげ髪の小さな女の子がこう言った。

 スカートは、赤くなっていた。


 いつから、おさげ髪か?

 いつから、赤いスカートか?

 それは、いつの間にかと言うしかない。


「カギさん、その赤いスカート、ステキですね!」

『テヘッ!そう思う?そうか~、カズは赤いパンツが好きっと!マイナス10点!』


「はぁ?何を言ってるんだよ!オレは謙虚になって言ってやったんだっつーのに、だいたい赤パンだと、何故ダメなんだよ?」


『・・・汚い言葉、マイナス10点。通算マイナス50点で、ツラい事が待ってますのでご注意ください』


 えっと、何点だっけ?

 クソッ!

 わかんねーよ!


『クソとか言わない。マイナス10点!』


 こうして、今度は実地訓練が始まった。


 因みに、いま、マイナス40点だった。


 僕が、あの書で会得したのは、身体強化関係各種、武術技能関係各種、特殊系技能関係各種、勇者の底力Ⅰ、カギとの友情、勇者の心得Ⅰなどであった。


 なんか、よくわからないのがあったり、特にカギとの友情とか、そんなのをどうしろっていうんだと思うのが結構あったりで、各種とした。


 大丈夫なんだろうか、この勇者の書は?


 僕は、そんなことを考えながら、実践訓練という名の、このカギとの剣や素手での戦闘訓練を中心に行った。

 これは、苛烈を極めたもので、死にそうになりながらの訓練だったし、勇者の書による各種能力の向上や勇者の底力などが無ければ死んでいた。


 カギのヤツ、強すぎるだろ!


 そうして、僕は、訓練を終えて、あるレクチャーを受けてから、直ぐに学校へ行った。


 学校へは着くのが早すぎたので、あの昼寝の場所で目覚ましをかけて寝た。


 そして、僕は、時間となり、瞑想に入る。


『任せたぞ、お前!』

『かしこまりー』

『なんで、アイツのマネをするんだよ!』

『かしこ、まり』

『頼んだぞ』


 こうして、僕の本体は眠りについたのだった。


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