第86話 クサイ芝居
もう教室に入っても、おはようとか言わないし、学校へは早く行くが、始業時間の1分前にクラスへ行く事にした。
ユミがギリギリで登校して来た。
このお嬢様は、ホントに良くわからない。
「おはよう!」(ユミ)
「おはようございます!」
「えっ?藤堂、何で・・クッサ!あなた、臭いわね!何、それ?あなたの髪の毛、なんかベタベタしてない?くっさ!!わたし、臭いの、生理的にムリ!香織、あなた、クラス委員長なら、この人何とかしなさいよ!」
ユミさん、君、言い過ぎだよ!
「・・また、藤堂ね!あんた、エラそうな事言ってて、何よ?身だしなみくらい、ちゃんとしたらどうなの?もしかして、お風呂とか入って無いわけ?」
「すいません、早乙女さん。僕の事でご迷惑をおかけして」
「・・・何なの?藤堂・・」
「おい!マジでクセーぞ、藤堂!お前、教室の後ろの壁に移動しろよ!みんな、コイツ臭いから、ホントは教室に居て欲しくないけど、後ろの隅っこに移動させるから、勘弁してやってくれないか?」
「護道さんは、流石だぜ!藤堂なんかの為に、オレらに謝るなんてよー」
「ホント、護道君って、仲間思いよね」
「それにしても藤堂君って、変わってる。あれって、ホントなんじゃない?」
「おい、さっさと行きやがれ」
有象無象が、いろいろと言って、僕は、後ろに行かされた。
机と椅子を持って。
横を通るたびに、クラスメイトという赤の他人から、臭いと言われた。
誰も僕を庇う者は、居ない。
それでいい。
僕は、そう思い、何も反論はしない。
とにかく、喋りたくない。
関わって欲しく無かった。
担任が遅れてやってきて、僕の方を見たが、見ていないフリをした。
授業中、教師がちょっと変な目で見たが、何も言われなかった。
休み時間に、護道がシオンを連れてやって来た。
コイツ等に関わってはダメだ。
「おい、藤堂!寝るなよ!なんか、オレに言う事があるだろ?」
「・・こんにち、ハッ?」
「はあ?お前、ナメてんのか、オラ!」
(無性にムカつく!オレは副委員長だ!ここは、きっちりと上下関係を、教えておこうか!)
護道が僕の頭をはたいた。
「護道君、やめなよ!」
シオンが止める。
「藤堂君、どうしちゃったの?教科書も、さっき、開けてなかったわね?」
見てたんだ。
何故、僕の事を構う?
「教科書、無くしましたから、ごめんなさい。白藤さん」
「・・藤堂君、ホントにどうしちゃったの?」
「白藤さん、貴女は僕に、話しかけないでと言われましたよね?」
「えっ?ああ、でもね、私から言うのは良いの」
「紫苑!藤堂なんかと喋ってたら、バイキンが移るよ!護道も、ソイツになんか構わない方がいいよ!」
ユミがそう言ってきた。
「確かに、そうなんだがな。コイツにちょっと自分の立場をわからせてやろーと思ってな!おい、オレに言う言葉は?」
「サヨナラ?」
「お前、なめとんのか〜!オレに感謝しろって言ってんだよ!そういう場合、どう言ったらいいのかな、学年1位の藤堂君?」
「護道君、いちいち、ありがとうございます」
「お前!」
バシッと藤堂の頬が鳴った。
(なんだか分からんが、コイツの言い方、コイツの態度、コイツの雰囲気、腹が立って仕方がない!)
「喧嘩はやめて!」
「そうよ!あなたの大好きな紫苑が言ってんだから、護道、自重しなさい!」(ユミ)
「ぺッ!運が良かったな、藤堂!大人しくしてるんだぞ、クソ野郎が!」
この人達、ウザいですね。
僕は、何も関わりたくないのに、そっちから来たくせに。
シオン、こんなヤツと恋人って、君は変わっちゃったね。
次の時間から、平和になった。
誰も来ない。
ああ、僕も休みたいよ。
授業は簡単過ぎてつまらないし、クラスの人とも話さないし、ヒマだ。
僕は、だから、休み時間は寝てた。
そして、小耳に挟んだ話では、みんな、部活動とか、入っているみたいだ。
それから、テレビのドラマとか、アニメとか、映画とか、ゆチューブとか、インスタとか、韓国の歌のグループとかの話題で盛り上がっている。
知らない。
僕は、そんなの知らないや。
興味も無い。
スマホも、あの時、シオンと早乙女にフラれたときから、ラインはやらない事にした。
そして、もうお金も無いから、そろそろ捨てるんだ。
クラスのグループラインも招待なんか来ない。
僕は、ここでは同じ教室に居る部外者だ。
そして、普通の高校生のような話題とかも無いし、興味すら無い。
だからか?
僕に親友とか出来ないのは?
僕は、他の子たちとは違うのか?
変態とか、変人とか、他人から見たらそうだよね。
だからか?
恋人が出来たと思っても、長続きせず、実は本当の意味で愛されてなかったってこと。
単なる見た目だけの、中身の無い変人、それが僕だったんだ。
でも、だからって、じいちゃんとばあちゃんに誓った事、高校生活を楽しむ、って事を諦めきれない。
ああ、もう、考えるのも疲れちゃったよ。
僕は、それから昼休みまで、寝ては授業の繰り返しだった。
そして、また、例のところで、パン一個を買って、水道の水を飲んで食べる。
そして、また、昼寝。
『・・・・
『えへへへへ、そんなこと、それより会長、アイツ、落とせるんですか?』
『ふふふふふ、私を誰だと思ってるんだい?処女殺しって、二つ名は伊達じゃないんだよね。もう少しだ、もう少しで、ふふふふふ』
『げへへへへへ、それじゃあ、約束通り、その後はよろしく頼みますよ、会長!』
いったい、誰だ?
なんか気持ちの悪いオーラで、目が少し覚めちゃったじゃないか。
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