第82話 階段の試練

 

 20段くらいの階段が現れた。

 そして、その階段を登り切った所が少し広がっており、そこに机が置いてあって、その上にリンゴらしきものがある。

 リンゴの上の空中に、ココって文字と矢印が浮かんでいるので、そういうことなんだろう。


『いいか、質問は受け付けない!ハジメ!』


 時間がないので、素早い判断力が必要だ。

 当然、まずは、階段を上ってみる。

 すると、この階段は、段の部分が動いて所謂、エスカレーターと同じ要領なんだが、上る度に下へ動く。


 上るスピードを速める。

 しかし、そのスピードに合わせて下へ動く。

 時間がない。

 チャレンジだ!

 オレも基礎体力は上昇している。

 普通の人間のスピードと思うなよ!


 そう思い、本気の速さで階段を上る。

 だが、5段ぐらいしか登れない。

 もっとだ、もっと速く足を動かせ、もっと行けるハズ!

 もう、20秒は経過してるだろうか。

 ヤバい。

 スピードは上がっているのに、まだ、5段が精一杯だ。


 なんだ、これ?

 これって、この階段を上がれないように出来てる?


 オレは、上がるのをやめた。

 降りる時に、下にジャンプして降り、転がった。

 そうしないと、ものすごい勢いで下に動いているから。


 ・・・ジャンプ!

 その手があった!


 オレは助走をつけて、階段の上までジャンプしようとした。

 もちろん、それは、もう、人間業じゃない。

 オレは、スーパーマンじゃないので、一回か2回は、階段に足を着ける覚悟で跳躍する。

 階段の13段くらいで、一回着地して、そこでもう一度踏み切ってジャンプした。

 とにかく、掴めばいいと思ったので、着地無視でりんごの前へ手を伸ばした。

 届いた!


 と思ったら、何か透明の壁のようなものがあって、手が弾かれた。

 そして、オレは、勢い余って、机に激突した。


 と思ったら、そこでも、直前に身体が弾かれた。

 オレは、落下し、階段の真ん中あたりで、身体を打ちつけて下に転げ落ちた。


 全身打撲だ。


 と思ったら、痛みはなかったし、血も出ていない。

 うん?

 そういう所なのか、ここは?!


 オレは、立ち上がり、リンゴをにらむ。


 時間がない。

 今の着想で行くしか、手がない!


 空中に、数字が浮かんだ。

 20、19、少なくなってきている。

 もちろん、残り時間だ。


 オレは、意識を階段とその上の机の所へ集中させる。


 見えるか?


 ダメか?


 いや、必ず、何かがあるハズ!


 やるんだ!


 やれる!


 オレは・・・ここでは終われない!

 

 えっ?

 なぜ、そう思った?


 オレは、一人ひとりになった。

 誰も、オレの味方はいない。

 じいちゃんもばあちゃんも居なくなった。


 ああ、ユミがいる。

 ユミ、チカラをくれ!

 君の笑顔を守りたい。

 勇者になって、守りたい。


 ああ、でも、それだけじゃない。

 オレは、やらなくちゃいけないんだ。


 オレがオレであるために!


 オレの心が、ここで終わる事を許さないんだよ!!


 15、14、13・・・・


 時は、容赦なく刻まれていった。




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