第81話 カギの事情

『つまりだ、どうも、よくわからんのだが、オマエ、キスするとかで、やけにドキドキしてないか?』


「なに!お前はオレのどこまで読み込んだ?」


『すべてだ』


「それ、必要なのか?ちょっと、アレだぞ、個人情報すぎるだろ、それ!プ、プライベートな問題だぞ、それ!・・・えっと、まさか、勇者にはプライベートってないのか?」


『なんだ、そんな基本的な事も教えられてないのか?誰だ、教育者は?』


「えっと・・・じいちゃんとばあちゃん」


『ああ、アイツらか・・・・・知らねーな』

 オレの脳内映像を見やがったけど、知らないってどうなんだ?

 

「お、おまえ、本当に大丈夫なんだろうな?」


『・・・お前、信用してないのか?そもそも、勇者ってのは、元々はオレが認め、育ててやったヤツのことだ、この世界ではな!後は、アイツが育てたんだろ?オレは知らないからな、眠りについた500年間のことは!』


「えっと、だったら、何で、あのカエルがお前を持ってたんだ?カエルは不死身か?」


『バカなのか、お前は?まずは、オレは鍵なんだぞ!歩くことも出来ず、どうやって敵から隠れていたら良い?何かの宝の箱とか、どこかの地中の中とか、いろいろ考えたが、全て、問題がある。お前の、少ない能ミソでも考えてみろ。長い間、ほぼほぼ一人にだけしか知られず、敵にも壊されることなく、戦乱や天災にも耐えられ、それでいて、また勇者を育てる役割が出来る方法を。オレを知ってる者は、初代勇者だけだ。アイツとは約束を交わして、オレはカエルの中で眠りについた。カエルにはカエルの事情があるから、お前に話す義理はまだ無い。その初代がオレの眠った後、どうしてたのか、どうなったのかはわからんが、オレはカエルの中にずっと居て、起きたらお前が目の前に居たってことは、どういう事を意味しているんだろうな?つまりは、そういう意味なんだろう?わかったか?』


「えっ?・・・ああ、まあ、そういう意味なんだろうな。でも、結局は宝箱のような箱を使ってるじゃないか?」


『ふん、それは、勇者に用意させていたんだ。ただの器だよ。神社の御社に、たぶん、全国の一ノ宮辺りには、おいてあるハズさ』


「だったら、カエルも一ノ宮に居るのか?全国中に?」


『さあな』


「でも、オレの住んでた家は、遠かったのに、なぜカエルが出て来れたんだ?」


『お前、質問したらいいってもんじゃねーぞ!面倒だな!たぶん、カエルをあの家に持って来てたんだろう?・・あるいは(オマエ・・ハ、ヒョットシテ)・・・まあ、そうだな。オレは知らないが、オレを使うつもりでそこに居たのかもしれんということじゃないのか?』


「ふぅ~ん、でも、初代と交わした、その約束の中身をはっきり教えてもらわないと、オレの推測であっているのかどうかがわからないんだけど?」


『・・・・・ふん、確かに、そんなにアホでもなさそうだな。まあ、そのうち、わかるだろうさ。お前、基礎はできてるんだろう?そうでないと、この試練、ムリだからな。一応、忠告な。ダメだったら、オレ、ヒマじゃないから、他の勇者のタマゴとか、情報を得るために・・・ちょっと、いろいろとしないといけないからな。もちろん、お前にも、その時は手伝ってもらうぞ!どっちだろうと、死ぬかもしれんがな・・・・覚悟は良いか?』


「・・・・やるしか、ねーだろ!!」


 もう、覚悟なんか決まってる。

 だが、死ぬかもしれない。

 その言葉に、少しだけ躊躇した。


 ユミ、せっかく、お前と恋人になったのに。

 こんなにすぐに、死ぬとか、有り得ないからな!


 護道、アイツの好きにさせないって、誓ったんだからな!


 オレ、まだ、童貞なんだからな!!



『デワ、シレン、スル』


 急に、目の前に、大鎌を持った大男とその男に押さえられ、その大鎌を首に突きつけられている少女が現れた。


『オマエ、ショウジョ、タスケル、シカシ、スコシ、ウゴク、コノ子、命、無い。時間、20、ビョウ!ハジメ!』


 ・・そういう事だろ!

 時間がない!


 オレは、もう、恥も外聞も捨てて、両腕を鳥の様に大きく広げて、それをバタバタさせながら近づいた。


 大男は何もしなかった。


 大鎌の柄を掴んで奪い取ると、脇に捨て、少女を奪還する。

 その間、やはり大男は何もしなかった。


 そして、少女も大男も消えた。

 なので、大きく動いただけだ。


『コレは、サービス問題なので、喜ばないように。次の試練に行くぞ』

「ちょっと、待った!試練って、いったい、どれだけあるんだ?」


『ふん。言わないと出来ないのか?』

「・・いや、そんなことは・・・」


『試練は、お前がシンの勇者になるまで続く。だから、どれだけとか、そんなの意味がない』


「そのシンの勇者ってのは、誰が判断するんだ?」


『お前は、バカか?オレ様しかいねーだろ?』


「いや、お前とかは、単なるカギで、勇者になっても、そりゃーいろいろあるだろうけど、判断とか、そういう勇者を認定するのは勇者の組織のモノ達とかじゃねーのか?」


『オレの話を聞いてなかったのか?オレが勇者を作った。オレが認めたモノが勇者に決まってるだろ?』


「じゃあ、勇者の組織とかって、ユミが言ってたMPっていうのは何だ?」


『知らない。初代が作った組織じゃないのか?』

「いや、でも、そこで勇者とか聖女を育てているんじゃなかったのか?」


『だから、知らねーよ!お前の言う組織というのは、少し調べた方が良いのかもしれないが、それはそれ。こっちはこっちだ!』

「・・もうひとつ、いいか?聖女との関係は、何だ?」


『言う必要を認めない。お前、バカすぎるぞ!お前は、まだ勇者じゃない。しかも、勇者になれるのかもわからない。そんなヤツに詳しい話をすると思ってるのか?』


「・・・・じゃあ、早く、次をしようか。バカバカと、何回も言いやがって!あまり、オレをなめんなよ!」


『あははははは!小僧、それだ!その目だ!お前、オレが甘い判定をするとか思ってただろう?やっと、目を醒ましたか?本当の試練は、これからだ!!』


 空中に、またも文字が浮かび上がる。


『『この階段の上にある、リンゴを手に取れ!制限時間は、1分』』


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る