第83話 心眼

 

 たしか、無だったよな?

 でも、何も無いとかじゃない。

 作為的で無い心、予断の無い心・・何も思わず、無心に見る!



 11、10、9、・・・・

 この数字も見ない!


 目を瞑る。


 ドク、ドク、ドク・・心臓の鼓動が聞こえるのは仕方が無いか。

 でも、もっと、集中しろ・・・?

 じゃない、そういう意識も手放せ!


 じいちゃんに教えられただろう!


 心で見ろ!

 無心に見ろ!

 世の全ては波動を発している。

 だから、感じろ!

 心眼とは、心で目の様に感じとれるチカラなんだ!と。


 世界が静かになった。

 時間もゆっくりとなった気がした。

 意識を無意識に(㊟ここの方法はいろいろとあるが、定かな表現方法を知らないので、こんな感じ?)階段と机全体に広げる!


 そして、机への方へと!(㊟無意識下での意識的操作?という会得した者にしかわからない境地、よって、筆者にはわからない、あしからず)


 ただ、見た!


 もはや音は無く、心臓の鼓動も聞こえない、オレも消えたようになって。


 ただ、そこにある机を、見た。



 見え・・た!


 オレは、すぐに動いた。


 オレは、机の横に立っていた。

 そして、手を伸ばし、リンゴを取った。


 その瞬間、オレは、元居た位置にリンゴを持って佇んでいた。

 階段とかは消えていた。


 そうだったか、やはり。

 オレの推測は正しかった(㊟後ほど解説する、と思う)。


『ふ~ん、クリアしたか。ギリギリだったけどな。どうやら、勇者の駆け出しにはなれるかもな。いや、まだ、試練は続くんだけど、わかったよ、お前のチカラ。認めてやるよ。まずは、そのリンゴを食え。でないと、死ぬぞ』


「このリンゴ、ホンモノではないみたいだな」


『ああ、キリスト教の聖典にある、禁断の木の実はリンゴではなかったというお前の知識を拝借した。リンゴの形は同じでも、中身は違うからな』


「質問、いいか?オレは、学校があるけど、始まる前に帰れるのか?」

『えっ?学校へ行くのか?』


「当たり前だ。オレ、高校生になったばかりで、しかも、高校生活を楽しむって、じいちゃんとばあちゃんに約束したからな」

『・・・そうか。う~~ん、辞めれない?学校なんか?』


「いや、わかるだろ?オレにはやりたい事ややらなければならない事があるんだよ」

『童貞だからな、お前は』


「いや、関係ねーだろ、それ!」

『・・・はあ、めんどくせー!だいたい初代といい、何で人間はめんどくせー生き物なんだ!特に、勇者になるヤツ、めんどくさすぎ!』


「初代がどうのとか、関係ねー。でも、初代を面倒みたんだったら、オレも同じに扱ってほしいじゃねーか?ダメなのか?」


『まずは、それを食え』


「うげっ!まっず!」


『残さず食え!』

(オマエの決断力、実行力、知能、勇気、冷静さとかは、合格点かもな。だが、まだ大切な事がある。それを見てからだ、シンの勇者への道を歩ませるかどうかは)


『・・・・勇者・・の駆け出し・・の駆け出し!だったら、根性見せて見ろ!時間がないから、次を飛ばして、最後の試練だ!いいか、全部食ったよな!』


「このリンゴを食べるのも試練なのか?」


『おい、結構、マシなハズだぞ』


「いや、お前は鍵だから味覚とかわからないだろ。ああ、そうか、500年前だと、この味でも良かったって事か?これからも食わされるんだったら、改善を要求するぞ!」


『それだけ減らず口を叩けるのなら大丈夫だな。よし、駆け出しに向けての最終試練だ!』


『『この子供を斬ろ!』』


 文字が浮かんだ。


『質問は受け付けない!では、始め!』


 周りは、白一色の壁になった。


 前方には、確かに、子供が居た。


 白い服と短パン?を履いている。


 子供は、ニヤリと笑った。手には日本刀のような剣が握られている。

 子供のクセに、長い刀身だ。


 オレもいつの間にか、手に日本刀を握っていた。

 オレは、既にじいちゃんとの訓練で武道は一通り叩き込まれていた。

 特に、剣道は得意である。


 眼が一瞬合ったと思ったら、素早い動きでオレに打ちかかって来た。

 オレは、何とか刀で防ぐ。


 だが、この子供は、連続で素早く、正確にオレへ刀を打ち込んでくる。

 そうして、十数合も打ち合っただろうか。


 その子供は、今度は、大きく間合いを取った。


 何かを仕掛けてくる!

 オレは、全神経をその子供に集中する!


 すると、子供は、30体くらいだろうかに、分身して、オレの周りを円形に囲んだ。


 そして、一瞬の間の後、全員一斉に刀を向けて飛び掛かって来た!


 コイツ等、全員が、もちろん同じ白い色の服と短パンで、壁の色と同じ色。

 だから、まるで日本刀だけが30本、オレに向けて襲い掛かって来た様に感じられる。


 これを全部相手にするのはもちろんムリだ。


 分身・・なのか?

 ヒントがあるハズ。


 ・・ああ、そうか!

 この試練、ここまでの試練の延長上にあるハズだ。


 だったら、オレは心眼の、あの極意で見る。


 コイツ等の刀身が迫る。


 だが、無視だ!


 オレと子供達だけの存在を感じる、そして、子供・・が何処かに居るハズ!


 見つけた!

 子供たちの刀身がオレの身体へ肉薄する。


 だが、構わずに、を斬る!


 もちろん、他の子供たちの刀身がオレの腕に当たりまくる。

 だが、関係ない。


 その子を斬ったら、すぐに、子供達は消失し、斬った子供だけがうずくまって、こっちを見て、笑った。


 やった!


 のか?

 違和感?


 この子供、笑った目線の先は、オレではなかった!

 オレの後ろの何かだ!


 オレは、直ぐにその場を離れようとした。

 背中から頭の後ろまで、ゾワリと震える。


 やられる!

 そう思ったら、後ろのモノがオレに剣撃を浴びせたのだった。



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