第74話 ナポリタン大盛り


「うふふふふふ、その前に、何で藤堂が親分なの?」

「ああ、それは・・・・・」

 オレは、早乙女がコイツ等にナンパされていた経緯から話した。


「そうなんだ。本当の事を言うと、香織はね、まだあなたの事が好きなのよ。この事を伝えたくて」


「それはない!ユミも見てただろ?ホームルームで、あいつの言うことを。それに、あいつから、デートで買ってやった指輪を投げ返されたんだ。もう、それなのに好きとか、ムリだから。オレは、それでもとか思ってたよ。甘かったぜ。あいつに護道の会社が一枚噛んでるって話を暗に言ってるのに、何だよ、アレ?もう、オレはあいつにとって、ただの変態な犯罪者なんだよ!」


「そうかしらね?あの子、指輪を投げて返したのは自分の心にケリをつけたかったのよ。あの子、オリエンテーションの晩、寝る前に泣いてたんだから。それでも、委員長だからって、昼間から頑張ってて、翌日もみんなをまとめようと頑張ってたのね。もう打ち上げの時、歌を一緒に何度も歌わされて、迷惑だったんだから!まあ、わたしが上手ってのもあったんだけどね」


 さりげなく、自分をアピールするコイツは、オレの味方なのか?

 それとも?


 もし、コイツがホントの黒幕なら、以前のオレなら確かに引っかかってるだろうよ。

 全ての可能性を考えないといけないんだ。


 護道がこんなにも簡単に自分の親の企業を使えるのかどうかもわからない手探り状態の、今のオレの状況では、情報が少なすぎるからな。

 でも、今は基本、誰も信じない、信じられないんだ!


「だから?・・・・・だから、オレにあんな事を言う早乙女を許せってか?冗談じゃない!お前、早乙女の親友かなんか知らねーけど、オレは、もうあいつとは、終わったんだよ!」


「ホントに拗れちゃったわね、あなた達」

「拗れてんのは、あいつの方だ」


 スパが来た。

 静かに来た。

 お前、そういう気遣いとか要らねーから。

 ?

 見てたのか?

 オレ達が何となく揉めてるのを?


 コイツ、仕方がねーヤツだぜ!


「美味しそう〜!ありがとうね、子分さん」


「いえいえ、姐さんの為なら、どんな事でも」


 どんな事でもだって?

「おい、ちょっと顔貸せ!」


 オレは、子分に、ある用事を思いついた。

 蛇の道はヘビだ!


 オレは、あの映像にあった画像が探せなかったので、子分に探させたのだった。


 有名人にオレの顔は似てるから、あの俳優だったか、モデルだったかの顔を載せてる本物か偽造かの画像とか、たくさんネット上にあるはずだ。

 だから、その芸能人を検索して、コレのヤバい画像を探すようにと指示した。


 オレには探せなかったので、たぶん、裏サイトだ。

 まあ、当然ではあるよな、違法だからな。

 そもそも、みんなが見れる場所にあんな画像があれば、すぐに消去されるし。


 オレは、そんなところにアクセスした事がないので、コイツ等なら知ってそうだし、それに何か仕事をさせないと、ずっとオレ達の事を何処か隠しカメラかで見ているに違いないからな。


 席に戻ると、もう半分くらいユミは、平らげていた。


「・・どうだ?美味しいか?」


「カフェのナポリタンって、何で美味しいのかしら?」

 知らねーよ!


「うめーな!これ!」

 あれっ、この前に食べたのより美味くないか?

 そういえば、あんな食べ方したから、味とかわからなかったよ!


 ただ、ちょっと、恥ずかしくて、甘酸っぱい味だったっけ・・・そうだ、あの時、恋人プレイして、早乙女が可愛くて、笑顔が可愛くて、無邪気にオレを見て笑ってくれた顔が愛おしくなって・・・涙が出てきて・・・少し、しょっぱい味になったんだっけ?


 そして、あの時も大盛りだったよな。


 早乙女、お前は変わっちまった。

 シオンも変わっちまった。

 もう、あんな彼女たちと話したくないし、顔も本当は見たくない。


 早乙女も言ってたよな。

 一緒のクラスに居るのも嫌だって。

 オレもだよ、早乙女。


 お前の事、真剣に好きだったんだ、オレ。

 お前のあの笑顔が、このナポリタンを食べてたら、蘇ってきちまうよ。

 あの笑顔、大好きだったんだ、オレ、大好きだったんだよ、早乙女の事が!


「藤堂、そんなに感動してるの、美味しくて?」

「ばんで(何で)?」

「だって、涙が出てるよ」

「ごっくん、ああ、めっちゃ、うめーよ。これは、オレにとっての特別なヤツだからな」


 涙が出てたってか・・・オレ、泣かないって誓ったのに?

 心の修行って、どうやったら上手くいくんだろうな、なあ、じいちゃん。


 オレは、急いで食べた。

 が、ユミにやっと追いついたと思ったら、スペシャルドリンクとデザートが来た。


 これは、プチケーキティラミス風とカボチャプリンと、そして、自家製若草モチ?


「この若草モチは、抹茶を使っているのか!『松前藩に出された本家とは、似て非なるモノ!抹茶を練り込んだモチに、抹茶入りの魔法の粉を振り掛ける、正に抹茶づくしのモチ。抹茶特有のほろ苦さに和三盆を使用した上品な甘さとのハーモニーは、絶品!』って書いてあるな」

 注)筆者の勝手な創作ですので、質問は受け付けません。


 ここ、カフェなんだよな?

 いつも、ここのカフェのモノには驚かされるぜ!


 ペロリンと平らげちゃいました。

 実は、ユミが、若草モチをくれと上目遣いで言うものだから、それを半分やった。

 女の子ってのは、こういうのが好きなヤツが多いな!


「はあ〜、なかなかのモノだったわ。乙女心を捕まえるのが上手くてよ!」


 コイツ、なんか上から目線の胡散臭いお嬢様言葉なんだが?

 って、忘れるとこだった!


「おい、ユミ!そういえば、お前、オレの質問に答えてないな」


「えっ?なんだったっけ?」


「お前は、いったいナニモノ何だ?」

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