第65話 グルグル


 護道のドブ臭いオーラが護道の悪だくみをプンプンとさせているのが、わからねーのか・・・わからねーんだよな・・・早乙女も紫苑も、お前等は小学生の時にもそうだったから・・・結局は、あの頃と変わってねーのか。

 いろいろと後悔するとか、神様に祈ってるとか、自分に酔ってただけで全然変わってねーじゃん。


 お前等の心は、また護道にまんまと・・いや、でも、コイツ等・・・ひょっとして元々・・最初から村雨とか、どうでも良かったのかも?


 自分に酔ってる・・それもあるだろう。

 だけど・・村雨は変態認定されてたんだぜ、そんな奴をずっと中学まで恋人を作らないまま想い続けてた?

 話が綺麗すぎやしねーか?


 まだ、結論を出すには早いか・・・。

 見てやるよ、お前たちの心を!


「・・早乙女、お前は、この話をすぐに信じたのか?」


「・・最初は信じられなかったよ!でもね、あの証拠は絶対だし、他にも証言が次から次に出て来て、そして、アナタの変人の・・信じてたのよ、アナタの事を。でも、私、バカだったわ。久美子も言ってたけど、男を見る目がないのよね。裏切られたわ、アナタのその無駄なイケメンの顔にね!悔しいよ!ホントは、アナタと同じクラスにも居たくないんだからね!それでも、委員長、やるしかないから。アナタ、クラスメイトとして、私たちに迷惑かけないでよね!そして、もう二度と不正はしないでよね!これで、クラスの代表としても、言う事は言えたわ。」


 なに?

 今、言いかけたオレの変人の?

 ナンダ、ソレハ?

 オレは、彼女の心を見ようと意識を彼女に集中していた。

 しかし、護道が続いて、小癪こしゃくな事を言ってきて、集中が途切れる。

 でも、オレは、一瞬捉えたぞ、彼女の心に浮かんだ映像を!

 余程の想いを抱いてもらわないと、オレはまだ心を覗くのはムリなのだが、彼女にとって、これはそういうモノだったのだろう・・・・。


「オレ達も、あまりお前一人を吊るし上げるようなマネはしたくない。だから、みんな黙ってるだろ?良いクラスだよな、ホント。お前も、感謝するんだな、みんなに。なあ、紫苑?」


 みんなはそれで黙ってたのか?


 うん、紫苑か?

 コイツの心は、相変わらず読めない。


「そうね、みんな、優しいから、許してるから、だからこれからはちゃんとやろうよ、ね?」


 もう、オレが絶対に不正をやってることになってるな、紫苑の中では。

 コイツの言葉には、悪気はない。

 いや、寧ろ、良い子ちゃんぶってるというか、まるでヤンチャな子を諭すような感じ?

 オレって子供なの、紫苑にとっては?


「じゃあ、今日のロングホームルームで謝ってもらおうか、みんなの前でな!」


 出たよ、ここで吹き出て来たよ、キタネーけど、ウキウキした感じでわちゃわちゃしたオーラが。

 このオーラに触発されたのか、紫苑が自ら発言をする。


「えっと、ちょっと訊きたい事があるんだけど。その・・は、カエルの鳴き声って、何て言うの?」


「・・


「・・そうなんだ」


「何だよ、それ、バカなんじゃね?やっぱ変人だな、こりゃ」


 紫苑は、目を伏せた。

 お前、しっかり確認したよな、今。

 これでわかったよな、紫苑!


「オレも、紫苑に言いたい事がある。お前は、引きづり過ぎだ。もう、オレはなんだ。のオレとして、見てくれ!そして、早乙女、お前の恋って、恋に恋してただけだったんだな!そんなウワベだけの恋愛なんてのは、きっと破綻するんだよ。オレは、信じてたんだけどな、ついさっきまでね」

 本当に愛してるんだったら、何があっても信じる覚悟をしろよ!

 お前には、結局、それが出来なかったって事だ。

 悲しいけど、早乙女、君の心は、浮ついていただけだ。

 君は、愛するって事を簡単に思い過ぎてる。


 オレは、そういう重いヤツなんだよ。

 他の軽いヤツがお前には似合ってる、残念だけどな。


「エラそーな事、まだ言うワケ?まるで私が悪いみたいに!!呆れた!!もうアナタとなんか喋りたくないから!さよなら!!」

 行ってしまった。

 辺りに嫌なオーラをまき散らしながら。

 でも、護道みたいにドブ臭くはない。

 ちょっと汚染はされてるけどな。



「あーあ、まあ、藤堂、お前さえ謝れば、許してくれるって。なあ、紫苑?」


「私も、謝るところは謝るべきだと思うわ。だから、そんなに頑なにならなくても、許してくれるから、だから、勇気を出して、ね?」

 またかよ、聖女モードというか・・・ちぇっ!ついラノベの影響が出たけど、聖女ってのは、もっと・・・・そうだな・・・クソッ!・・シオンのようなヤツが聖女なんだろうな・・・騙されてるけど、他人を思いやれる様な・・だが、それは有難迷惑ってやつだ、クソッ!


「いつから・・いつから、お前達は付き合ってるんだ?」


「あははははは!お前、紫苑の事、好きだったのか?お前、やっぱ、二股?あははははは!早乙女は、別れて正解だったな!こんな女垂らしなんかとはな!あははははは!紫苑はな、ずっと前からオレの女だ!手を出したり、色目を使ったりするんじゃねーぞ、コラ!紫苑も言ってやれ」


 膨れ上がったぞ、護道のクソ気持ち悪いオーラが!

 隣りの紫苑も吞み込んで、紫苑までも、まだそこまで染まっていなかった紫苑までも、どす黒く染まって・・・気持ち悪い。


 オレは、シールドを使用する。


「・・・ふぅ~~~、そうね、ちゃんと言っとくね!だからもう、私に話しかけないでくれるかな?なんだから、あんたの事!私の事は、放っておいてくれる?」



 えっ?


 本気で言ってるよな、これ・・・本気だよ、声がしっかりしてる。

 オレを村雨と知ってて、こう言ってる。

 紫苑の目のチカラからも感じ取れる。

 そんなに護道の事が好きになったのか、いや好きだったのか!

 あんなに、否定してたのに?

 オレにウソをついてたのか?


 いや、でも・・これは本心だ・・よな、間違いない。

 顔も赤くなってない。

 いや、お前のその顔、なんだか・・・・・・。

 オレの今のチカラで探れるだけ探ってみても、感じるだけ感じようとしても、答えは同じだ。

 彼女の言葉は本当のことだ。


 むっちゃ、嫌いか・・・・・・。

 村雨を引きずってるって言ったオレがバカだった、というか恥ずかしすぎる。

 言いたかったのか、村雨に会って、直接村雨が嫌いだったってことを、大嫌いだって・・・・。


 そんなに嫌いだったのかよ!


 そんな目で見るな、シオン・・・そんな顔をオレに向けるな、シオン。


 オレを見る目・・あの時の目を思い出す・・・・。


 オレも、そんなお前は・・大嫌いだ!!


「・・・わかったよ・・ごめんな・・・もう・・・じゃあ、お前ら、弁当なんだな、邪魔だから、もう行くよ」


「ああ、とっとと行け!コラ!よく言ったな、紫苑!可愛いやつだぜ!あいつ、ショックを受けてるよな、あはははははは!ああ、気分がいいぜ!なあ、紫苑、早く食べようぜ!そして、お互い、あ~んとかしようぜ!ぐふふふふふふ・・・」


「・・・うふふふふ・・・」


 聞きたくない!

 コイツ等の言葉を聞きたくない!


 クソッ!


 コイツ等二人だけでなく、その周囲にも、汚いオーラが溢れて、もっとシールドを張らないと反吐が出そうだ。


 耳にも、心にも、全部・・全部に!!



 紫苑、お前の心の声は、ホントの事は良く分からなかったけど、お前の声や表情からよくわかった。


 オレの事をホントに不正をしてると確信してる事、それとオレが村雨だと知って、引きずっているどころか大嫌いだと告げた・・・つまり護道が好きだったっていうお前の意思。


 ああ、もうお前とは話さねーから。


 オレは、隠した弁当を持って、例の所へ食べに行った。


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