第66話 ツツジの白い花は
オレは、隠した弁当を持って、例の所へ食べに行く。
いつの間にか、早咲きのツツジの花が咲き始めていた。
穏やかな晴天で、微風が気持ち良く顔を撫で、この前の嵐などウソのようだ。
ウソか?
奴等、ウソを信じてる。
護道だろ、このウソを演出してるのは?
そして、紫苑。
お前、ウソつきだ!
オレにウソをついてたんだよな。
これからよろしくね、だと?
騙されたよ、簡単に騙された。
本気で、護道の事を・・・・・今までのアレはウソだってことだよな。
つまりは、初めからウソだったってことだ。
でも、赤くなってたのは、オレの思い違いか、別の事で赤くなってただけで、護道が嫌いだったわけではなかったってことか?
まあ、子供の頃の癖とか、当てにならねーし、普通に恥ずかしがって赤かったってことだろうな。
もう身体は大人なんだから、子供の頃の身体の反応と違ってもおかしくないよな。
そうか、だから、護道に抱きつかれても振りほどかなかった、振りほどく必要も無かったってことだよな。
だったら、オレには、護道が好きじゃないとウソをついたのはなぜだ?
好きなのを知られたくなかった?
本当の事を言うのが恥ずかしかった?
一回否定したから、意地でも否定し続けた?
最後にもうひとつは、オレのことを弄んでいた、だ!
知られたくなかったらなぜ、今、誰にも分るようにというか、もうクラスのヤツは知ってるくらいにイチャイチャと?
恥ずかしいわけはない!
もう、恥ずかしいことをしてるんだからな!
意地を通したかった?
いや、それはバカだよな!
そんなことを続ける意味がない。
結論、オレの事を弄んでいた。
それしかねーよ!
取り合えず、いかにも護道に言い寄られて迷惑的な感じで言っておく。
一応、オレにも気がある風に装う。
そして、オレの反応を楽しむ。
そんな感じの、遊びだったんだろう?
いいように、遊ばれたよ。
そして、オレが村雨ってわかり、嫌いな村雨ってわかり、護道の手前もあって、はっきりと大嫌いという。
そうして、オレのフラれた様子を見て、護道と一緒に笑う!
クソだ!
最後に見た、アイツ等のオーラは気持ちが悪かったぜ。
つまり、シオンは、そういう女だったってことだ。
むっちゃんは嫌いって事をオレの言い方をまねて言った。
楽しいか、それ?
つまり村雨は嫌いなんだとオレにだけわかるように言った。
楽しんでるとしか、考えられねーな!
お前にとっては、護道以外は、好きや嫌いなんて、遊びなんだろうよ。
自分には、既に護道が居るけど、それを知らずに自分に近づいてくる男を相手に、好きかもしれない素振りをして。
平気で、護道は好きでないとか言って。
そんな女だったのか。
村雨の頃から、そんな女だったんだよな。
オレの事、好きとか言ってたのは遊びの時。
だって、大嫌いなんだからな、オレを、村雨を。
そうか、遊びの時だよ、夫婦のマネとかもした。
よく、それでオレ、怒られたし、好きとか言わされたり・・そうか、あの頃から、オレに対して、そういう遊びをしてたのか。
でも、まだあの頃は、無邪気だったハズ。
護道と同じクラスになってからか?
クソな護道と・・わかんねーけど。
なぜ、護道に知られたらダメなのか?
ああ、これは簡単だ。
元々、シオンは村雨が好きかもと護道が思っていたから、村雨の名前を護道の前で出すのはイヤだったってこととか、他にもいろいろある。
村雨はオレだとわかる理由を護道に言うのは、護道がヤキモチを妬きかねないからな。
シオンは、絶対グルグルのことは言えないよな、あの頃は護道が居なかったけど。
そこまで護道の事を気遣ってるってことの証しでもあるのか。
オレが村雨ってことを明らかに知っているのは、シオンだけだ。
つまり、それを何かのカードとして取っておく気か?
オレの弱みを握ったって事か?
まだ、オレを弄ぼうとしてるって事か?
護道の前では、話しかけるなとか、放っとけとか言いながら?
まったく、聖女じゃなくて、魔女だったよ!
これではっきりした!
シオンは村雨もカズトも嫌いだって事。
カズトも村雨も騙されて、弄ばされた事。
シオンは護道が大好きだって事!!!
お似合いだな、お前等は!
似た者同士だ!
オーラまで似てたよ!
濁って、汚くて、黒くて、臭いオーラ!
気持ち悪いヤツ等だ!
結局は、村雨のことも、ずっと好きだったとか、後悔してるとか、そんなの、ただの良い子ちゃんぶってただけ!
聖女的な良い子ちゃんで居たかっただけの自己満足と他人へのアピール。
オレに語った村雨に対する話も、自分がこんなに一途で、良い子だよってことのアピールの為!
オレの家に何回も立ち寄っていた?
そんなの、先生に言われてやって来たのかもしれないじゃないか?
近くだし、病んだオレを見たさに!
村雨の消息を自分が調べたわけじゃなく、親に調べさせてたんだから。
最初から、片想いだったんだよ。
やっぱり、オレの片想いだったんだよ。
オレが勝手に想ってただけなんだ。
騙されたぜ!
しおらしいことを言われて、いじらしくなって、両想いだったんだとか想って!
とんだ大バカ野郎だよ、オレは!!
フラれたよ。
あっさりフラれたよ。
って、ずっと前からオレはアイツに嫌われてたんだよ。
ふと、ツツジの花が目に入った。
白いツツジか?
たしか、白いツツジの花ことばは、初恋・・・・。
今、オレは、初恋が終わったんだ!!
初恋だったよ・・・初恋だったんだよ!!
なんで、今、お前たち、咲いてるんだ?
オレを・・いや、オレを励ましてくれてるのか・・そういうふうに想おう!
花には罪はないから。
初恋かぁ?
オレの初恋は、散っちまったなぁ~。
もう、アイツらとは、こっちからも話さねーし、関係ねーよ。
でも、オレの心が泣いてるのは止められねーな、ちくしょう!
片想いってのは、辛いな・・・・。
好きだった子が、実はとんでもないヤツで、オレの一番嫌いなヤツを好きだったなんて、ツライよ!
オレは果たして、他の女の子を好きになったりできるんだろうか?
しかし、護道、許さねーぞ!
お前の心は、きたねー色だ。
確かに、まだ、他人の心は、ちゃんとは読めない。
だけど、シオンを見たり、話してる時は汚いピンク色で、粘着質の波動だ。
気持ち悪りー波動。
こんなのをずっと浴びてたシオンは、どんどん毒されてしまったんだろうな。
そして、オレと話してる時の、護道の赤黒くドロドロした不気味な波動。
反吐が出る。
アイツは、害毒だ!
変わらねーな、あのクソみたいな性格。
シオンは、こんな奴とイチャイチャとか、オワッテルよな。
シオン、やはりお前は、護道と同じなのか?
元々同じ性格なのか、それとも同じ様な性格になってしまったのか?
久美子と昔から親友という時点で、オレはシオンをもっと疑うべきだったのかもしれないな。
でも、恋ってヤツは、特に初恋ってのは、客観的に見ることが出来なくなるのかもしれない。
このツツジの白い花のように、初恋ってのは、穢れのない、疑う事など出来ない純粋な気持ちから来るものなのかもしれないから。
しばらく、ツツジの花を見ていた。
もう涙は流さない。
誓ったから・・・・。
しかし、オレは、どうするべきか?
ホームルームかぁ?
護道の口車に誰もが、騙されたのか?
誰もが、オレに謝れと?
バカ言うなよな!
オレは、ウソなんか言っちゃいねーから、ただ正直に言うだけだ、バカ野郎め!
オレは、次の授業を休んだのだった。
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