第52話 女神(笑)

 ピリュリュリュリュリュリュ~~!!


 うん?

 なんだ?


 ピリュリュリュリュリュリュ~~~!!


 うるさいな・・・・・。


 オレは夢から覚醒した。


 寝汗をかいていた。


「・・・くくくくく・・・・そうかよ、PTSD、オメー、また来やがったな!くくくくく・・・そうだ!紫苑、君と話さないと。まずは、そこからだよな」

 オレは、もう、悲しまないし、苦しくない。

 次、どんな夢や映像を見ようが、オレはそれすら楽しんでやるんだからな!


 オレは、伊達にじいちゃんとトレーニングをしたわけじゃない。

 これから、その成果を見せてやる。

 待ってろよ、護道のヤロウ!!


 もう、オメーがオレの夢に出て来れなくさせてやる!

 絶対にだ!



 それから、放課後になり、オレは紫苑のところへ行った。

 そして、マックへ誘った。


 紫苑は二つ返事でOKだったが、用事があるという事で、午後3時半にマックということになった。


 今日はテストがあったので、5時間授業となり早めに終わったから、オレはその時間までヒマだった。


 野球部には、今日は行かなかった。

 まだ、本調子でないということにして。


 ヒマなオレは、早めに駅周辺へ行った。


 駅からは、いろいろな人たちが出入りする。

 駅前のベンチに座り、オレはスマホで調べものをしようとした時だった。


 あの子だ!

 それは、中学時代にコンビニで出会った女の子だった。


 あれは、見間違いようがない。

 以前見た時より、さらに可愛くなっていた。

 笑うとエクボがあるのは同じだが、髪の毛は肩にかかる位の長さになっていた。

 袖やスカート部分にフリル付きの、可愛いワンピ。

 色も薄いピンクがかった薄いオレンジ。

 春の装いだ!

 白ソックスが清楚な感じで更に良い!


 携帯を出して、誰かとしゃべっている。

 オレは、さっきから彼女の表情の明るさに驚いていた。


 どうした?

 もう、引きこもり的な感じから脱出できたのか?

 でも、明るくなって良かった。

 ちょっと、お化粧してるのかな?


 そんな事を考えていると、彼女に近寄って行くヤツがいた。

 アレは?


 彼女の方も笑っている。


 オレの心がざわついた。


 二人は肩を並べるように、路地へと消えていった。

 オレは、後をつけることはしなかった。


 彼女、もう彼氏が出来たのかな。

 あんなに可愛くして、男性に会えるって、もう大丈夫なんだな。


 オレには、どうすることもできない。

 だって、オレが勝手に、彼女に恋心をおぼえただけだから。

 それは、淡いもので、儚いモノだと知ってるから。

 彼女が幸せなら、それでいい。

 その時は、そう思った。



 そして、約束の時間10分前にマックへ行く。


 普通にハンバーガーセットを買った。

 彼女が来るのを待たずに食べる。

 食べる事で心を落ち着けようとしていた。


 ピクルスは、弾く。

 これ、なぜ入っているのか、謎だ。

 ピクルスの謎を考えながら、彼女を待った。


 予定をちょっと過ぎる頃、彼女はやってきた。


「ごめんなさい、遅くなっちゃって!」

「紹介して!」


「えっと、こちらは、わたしの古くからの友達で」

「親友でしょ!わたし、藤沢久美子ふじさわくみこです。よろしくね!」


「・・よろしく。藤堂と言います。あの藤沢さんて、有名ですよね?」

「えっ?そうかしら?」


「そうですよ!一中の女神だって、護道が言ってましたから」

「ええっ!そうなんですか?」


「そうみたいですよ。オレもまた聞きだから、その前後の話は知りませんが、やはり、ウワサは本当のようですね」


「えっ、ヤダ、わたし。そうだったんだ。わたしって、うふふふふふ!」


「あっ!そう言えば、今日の野球部の練習で、護道が投げるらしいよ。 1、2年生対3年生の試合だって!たしか、護道は、勝利をオレの女神に捧げるとか言ってて、朝からテンションが高くて、気合いが入ってたなぁ。あっ!でも、残念だよね、護道!ここにその女神が居るっていうのは・・」


「あっ!そうだわ、わたしとした事が!忘れ物しちゃった!早く学校に戻らないと、ヤバいかも!ごめんなさい、藤堂君。じゃあ、紫苑、またね!うまくやりなさいよ、うふふふふふ!」


 そう言うと、マックのフライドポテトだけを持って、後は紫苑に押し付けて急いで行ってしまった。


 邪魔者は、消えた!

 さてと、では、ちょっと話してから、カフェに行こうかなっと。


「行っちゃったね、あんなに慌てて。うふふふふふ。カズトくん、作戦成功のようね」

 なんでわかった?

 って、紫苑、おまえ、なんで楽しそうなの?


 まあ、それは、いいか。

 さて、紫苑、その笑顔、いつまで続くかな?

 お前の本音を聞かせて貰おうか!


 しかし、なぜ久美子と一緒だった?


「なんで、あの子が・・いや、彼女、護道の事が好きなんだな?君もそうなんだろ?」


「違うわ、護道君とは、単なるお友達。久美子は大好きみたいだけど。ところで、カズトくん?一中の女神って、初めて聞くんだけど、それって、アナタが勝手に思いついたのよね?久美子が嫌なの?それとも、邪魔だった?」


 オレは、思った。

 これ、たまたまオレは機転でデマカセを言ったが、この関係は使えるかもな。

 つまり、久美子は護道が好きだから、紫苑と護道が付き合うのは嫌だと思ってる。

 だから、紫苑とオレの仲を応援してるみたいだった。


 嫌なヤツだが、共闘できるかもな。

 いや、別に闘うワケではないが。



「あははははは!君は、凄いな!」

 どうなんだ?

 本音を言うべきか?

 しかし、ここは!


「どちらも正解だ!そして、君に訊きたい事がある。オレは、見たんだよな、君と護道が抱き合ってるの。だから、君はウソをついてるのか、それともオトコを惑わして遊んでるのか?本当はどうなんだ?」

 直球だ!

 どう来る、紫苑?

 お前の本音を話せ!

 いや、ウソをつくなり、言い訳を言うなり、いろいろと考えろ!

 お前のウソなど見破ってやるからな!


 オレは、紫苑の顔、仕草に神経を集中し、彼女の本音を探ろうとしていた。











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